優れた心理スリラーかと思ったらそれ以上だった

映画の始めの幸せそうなシーンからも、静かに、じわじわと悪い予感を覚えさせ、恐怖感を高めていく手法は、とても効果的。だが、もっとすばらしいのは、一風変わった心理スリラーかと思わせておいて、途中から、アメリカにおける中絶の複雑さや、性犯罪が与える傷がどんなに長く、広範囲に及ぶのかなど、女性についての問題に触れていくことだ。これは、自己肯定感を抑圧される環境に置かれてきたひとりの女性が、ついに自分に向き合う、成長とエンパワメントのストーリー。その辛く、苦しい心のジャーニーを、セリフが少ない中でも表現したヘイリー・ベネットに大拍手。セットデザインと音楽も、視覚、聴覚を刺激する。