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2023年 第36回東京国際映画祭コンペティション部門15作品紹介

第36回東京国際映画祭

第36回東京国際映画祭ポスター
第36回東京国際映画祭ポスター -(C)Tokyo International Film Festival All Rights Reserved.

 2023年10月23日から11月1日までの10日間、日比谷・有楽町・銀座・丸の内地区で開催される第36回東京国際映画祭のコンペティション部門15作品を紹介。応募数は、昨年からおよそ250作品増加した1,942本。3本の日本映画をはじめ、さまざまな国や地域、時代などを背景にしたオリジナリティーあふれる厳選された15本が、「東京グランプリ」と「観客賞」を競う。審査委員長は『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などで知られるドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース。(文:岩永めぐみ)

≫第36回東京国際映画祭公式サイト

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<東京グランプリ/東京都知事賞>『雪豹』

製作国:中国
監督:ペマ・ツェテン
キャスト:ジンパション・ズーチーツェテン・タシ

【ストーリー】
遊牧民の僧侶が飼う9頭の羊がユキヒョウに殺されてしまう。息子はユキヒョウを殺そうと主張するが、父親はユキヒョウを解放しようとする。

【ここに注目】
2023年5月に急逝したチベットの名匠ペマ・ツェテンが、亡くなる少し前に完成させたというドラマ。『轢き殺された羊』がベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を受賞するなど国際的にも評価が高く、同作や前作『羊飼いと風船』を含む3作が東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞と、日本でも多くの作品が紹介されたツェテン監督。本作ではチベット僧とヒョウとの交流を通して、人間と動物の共生について描き出す。

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<審査委員特別賞><最優秀女優賞>ザル・アミール『タタミ』

製作国:ジョージア、アメリカ
監督:ザール・アミール=エブラヒミガイ・ナティーヴ
キャスト:アリアンヌ・マンディ、ザール・アミール=エブラヒミ、ジェイミー・レイ・ニューマン

【ストーリー】
柔道の世界大会で金メダルを獲ることを目指すイラン代表のレイラとコーチのマリアム。しかし、イラン政府はレイラに怪我を偽って棄権するか、さもなければ国家反逆罪とみなすと圧力をかける。レイラは政府に従うか、試合を続けるかで葛藤する。

【ここに注目】
イランのスポーツ選手がイスラエルの選手との対戦を棄権するように政府に圧力をかけられていた実話に着想を得たドラマ。監督を『聖地には蜘蛛が巣を張る』でカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞したザール・アミール=エブラヒミと、『SKIN 短編』がアカデミー賞短編実写映画賞を受賞したイスラエル出身のガイ・ナティーヴが共同で務める。ドラマシリーズ「Lの世界 ジェネレーションQ」などのアリアンヌ・マンディが主人公を、ザールがコーチを演じる。

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<観客賞><最優秀監督賞>岸善幸『正欲』

製作国:日本
監督:岸善幸
キャスト:稲垣吾郎新垣結衣磯村勇斗

【ストーリー】
不登校の息子をめぐり妻と口論の絶えない検事の寺井啓喜(稲垣吾郎)、秘密を抱えるショップ店員の桐生夏月(新垣結衣)、夏月の同級生・佐々木佳道(磯村勇斗)、大学の準ミスターに選ばれた諸橋大也(佐藤寛太)、学園祭で大也が所属するダンスサークルの出演を企画した神戸八重子(東野絢香)。何の接点もないように見える5人の関係が、ある事故死をきっかけに交錯する。

【ここに注目】
桐島、部活やめるってよ』『何者』などが映画化されている朝井リョウの小説を、『あゝ、荒野』などの岸善幸監督が映画化した群像ドラマ。家族の問題に直面する男性など、5人の男女の嗜好や行動を通し、多様性の持つ意味を問いかける。昨年の東京国際映画祭で観客賞を受賞した『窓辺にて』でも主演を務めた稲垣吾郎をはじめ、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香といった、それぞれに闇を抱える5人の男女を演じる俳優たちの演技に期待が高まる。

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<最優秀男優賞>ヤスナ・ミルターマスブ『ロクサナ』

製作国:イラン
監督:パルヴィズ・シャーバジ
キャスト:ヤスナ・ミルターマスブマーサ・アクバルアバディマエデー・ターマスビ

【ストーリー】
失業中のフレッドは病気の母親と暮らしながらギャンブルばかりしている。フレッドは結婚式の撮影を生業とするロクサナと出会い、彼女のアシスタントになる。2人はイラン北部へ撮影に向かうが、ロクサナがある問題に巻き込まれ、それをフレッドが助ける。

【ここに注目】
ジャファル・パナヒ監督作『白い風船』の原案を手掛け、監督を務めた『南から来た少年』が東京国際映画祭のヤングシネマ・コンペティション東京ゴールド賞に選ばれたイランのパルヴィズ・シャーバジによるヒューマンドラマ。ロクサナという名の魅力的な女性と出会った青年を主人公に、イランの不安定な社会や不安を抱える若者たちの生きざまを描く。

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<最優秀芸術貢献賞>『ロングショット』

製作国:中国
監督:ガオ・ポン
キャスト:ズー・フォンチン・ハイルージョウ・ジェンジエ

【ストーリー】
1990年代、体制が急激に変化した中国。アスリートとしての現役生活を諦め、国営工場の警備責任者として雇われた元射撃選手が、自信喪失に陥ってしまう。

【ここに注目】
1990年代半ばの中国東北部を舞台に、リストラに揺れる工場で起きた実話からインスピレーションを受けた社会派ドラマ。元射撃選手の主人公などが社会のうねりの中で葛藤する。監督のガオ・ポンは配信ドラマ「Make A Wish」などを手掛け、本作が長編映画デビュー作となる。『二重生活』『ミッション:アンダーカバー』などのズー・フォンや、『ドリアン ドリアン』『桃(タオ)さんのしあわせ』などのチン・ハイルーが出演する。

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『エア』

『エア』より - (C) Metrafilms

製作国:ロシア
監督:アレクセイ・ゲルマン・Jr
キャスト:アナスタシア・タルィジナセルゲイ・ベズルコフエレナ・リャドワ

【ストーリー】
第二次世界大戦下のソ連。若き女性パイロットたちが戦場の最前線へと飛び立つ。彼女たちは年を重ね、誰かを愛し、大切な人を失いながら、男たちの世界で地位を築いていく。

【ここに注目】
『フルスタリョフ、車を!』などのアレクセイ・ゲルマン監督を父に持ち、自身は『宇宙飛行士の医者』でベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞したアレクセイ・ゲルマン・Jr監督の戦争ドラマ。第二次世界大戦の独ソ戦に出陣した女性パイロットたちの過酷な日常を描き出す。アナスタシア・タルィジナや『1941 モスクワ攻防戦80年目の真実』などのセルゲイ・ベズルコフ、『裁かれるは善人のみ』などのエレナ・リャドワなどが出演する。

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『真昼の女』

『真昼の女』より - (C) LUCKY BIRD PICTURES GMBH, C-FILMS AG, IRIS PRODUCTIONS S.A.

製作国:ドイツ、スイス、ルクセンブルク
監督:バーバラ・アルバート
キャスト:マーラ・エムデマックス・フォン・デル・グローベントーマス・プレン

【ストーリー】
1920年代のドイツ。姉のマルタと共にベルリンで暮らし始めたヘレーネは、医学を学びたいと考えていた。恋人の死やナチ党の台頭などの困難が続く中、ヘレーネはヴィルヘルムと愛し合うようになり、子供を授かるが、やがてヴィルヘルムと衝突する。

【ここに注目】
ナチスや東西分裂といった混乱の時代を生きた従軍看護師の女性が、不幸な結婚を経て自らの生き方を模索する半生を描いたドラマ。原作はドイツ書籍賞を受賞したユリア・フランクの同名小説。監督のバーバラ・アルバートはベネチア国際映画祭コンペティション部門に選ばれた『ノードランド(原題) / Nordrand』『フォールン(原題) / Fallen』などのオーストリア人女性監督で、日本でも公開された『サラエボの花』や『アイダよ、何処へ?』などの製作を担当してきた。

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『西湖畔に生きる』

『西湖畔に生きる』より - (C) Hangzhou Enlightenment Films Co., Ltd.

製作国:中国
監督:グー・シャオガン
キャスト:ウー・レイジャン・チンチン

【ストーリー】
緑茶の産地として名高い中国・西湖の沿岸。中国経済のめまぐるしい混乱の中で、ある青年が母親と共に暮らしていた。

【ここに注目】
春江水暖~しゅんこうすいだん』がカンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品として上映され、東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞した中国のグー・シャオガン監督。3部作の第1作として製作された前作に続き、2作目は茶の生産地に暮らす母と息子の物語。『スマート・チェイス』やドラマ「長歌行〈ちょうかこう〉」などのウー・レイやドラマ「末代皇妃 -紫禁城の落日-」などのジャン・チンチンらが出演する。

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『曖昧な楽園』

製作国:日本
監督:小辻陽平
キャスト:奥津裕也リー正敏矢島康美

【ストーリー】
達也(奥津裕也)は交通量調査員として働きながら母親(矢島康美)の日常生活をサポートしている。寝たきりの独居老人(トムキラン)の世話をするために団地に通うクラゲ(リー正敏)は、団地の取り壊し日が迫るある日、幼なじみの雨(内藤春)と共に老人を連れて車で旅に出る。

【ここに注目】
特別支援学校で教員をしながらインディーズで活動している小辻陽平監督の初長編作品。台湾を拠点とするツァイ・ミンリャン監督を敬愛する小辻監督が、孤独な登場人物たちの生と死をめぐる旅を実験的な演出で描き出した。キャストには『OLD DAYS』などの奥津裕也や『正しく忘れる』『枝葉のこと』などの矢島康美、リー正敏などが名を連ねる。

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『ゴンドラ』

『ゴンドラ』より - (C)

製作国:ドイツ、ジョージア
監督:ファイト・ヘルマー
キャスト:マチルデ・イルマンニニ・ソセリア

【ストーリー】
ジョージアの山を登り降りするロープウェイの仕事をしている2人の女性が恋に落ちる。

【ここに注目】
『ツバル』『ゲート・トゥ・ヘヴン』などユニークな作品を手掛けてきたドイツのファイト・ヘルマー監督が、ロープウェイの乗務員の女性同士の恋をセリフなしの演出で描くラブストーリー。東京国際映画祭のコンペティション部門で上映された前作『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』では家と家の間を縫うように列車が走るアゼルバイジャンの町を舞台にしていたが、本作ではロープウェイが走るジョージアの美しい山間のロケーションにしている。

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『野獣のゴスペル』

製作国:フィリピン
監督:シェロン・ダヨック
キャスト:ジャンセン・マグプサオロニー・ラザロジョン・レンツ・ジャヴィ

【ストーリー】
失踪した父親を捜す10代の少年のマテオ。ある日、マテオは親友を誤って殺してしまい、人生が一変する。マテオは父の友人であるベルトと逃亡することになる。

【ここに注目】
長編デビュー作の『海の道』がベルリン国際映画祭フォーラム部門でNETPAC賞スペシャルメンションを受賞し、東京国際映画祭でも上映されたフィリピンのシェロン・ダヨック監督の社会派ドラマ。主演のジャンセン・マグプサオのほか、実在の日本人ボクサーを描いた『義足のボクサー GENSAN PUNCH』で主人公のトレーナーを演じたロニー・ラザロなどが出演している。

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『ペルシアン・バージョン』

製作国:アメリカ
監督:マリアム・ケシャヴァーズ
キャスト:レイラ・モハマディニユシャ・ヌールカマンド・シャフィイサベット

【ストーリー】
イラン系アメリカ人のレイラは周りが彼女に貼るレッテルを乗り越えながら、正反対の文化を受け入れるようにしている。そんな中、父親の心臓移植手術をきっかけに家族に再会する。

【ここに注目】
アメリカで暮らすイラン人家族の姿を描き、サンダンス映画祭USドラマティックコンペティション部門の観客賞を受賞したコメディー。メガホンを取ったイラン系アメリカ人女性監督のマリアム・ケシャヴァーズは、長編劇映画デビュー作の『サーカムスタンス(原題) / Circumstance』でも同映画祭の同部門で同じく観客賞を獲得している。1970年代にイランからアメリカに移住した母と娘を中心に、二国間の緊張が増す中で生きる人たちをミュージカル風の演出を交えて見せる。

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『鳥たちへの説教』

製作国:アゼルバイジャン
監督:ヒラル・バイダロフ
キャスト:フセイン・ナシロフラナ・アスガロワオルカン・イスカンダルリ

【ストーリー】
ダヴドとスラは包囲されている。2人はハンターを待っている。ハンターはいたるところに存在している。

【ここに注目】
ハンガリーの鬼才タル・ベーラに師事し、『死ぬ間際』が東京フィルメックス最優秀作品賞、『クレーン・ランタン』が東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞したアゼルバイジャンのヒラル・バイダロフ監督の新作。深い森を舞台に、戦争がもたらす傷を美しいビジュアルと共に描いた芸術性の高い作品。タイトルは前作『サーモン・トゥー・ザ・フィッシュ(原題) / Sermon to The Fish』と対をなしており、フセイン・ナシロフとラナ・アスガロワは同監督作に4作連続で出演している。

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『開拓者たち』

製作国:チリ、アルゼンチン、オランダ
監督:フェリペ・ガルベス
キャスト:マーク・スタンリーカミロ・アランシビアベンジャミン・ウェストフォール

【ストーリー】
1901年、チリのティエラ・デル・フエゴ。3人の男たちが裕福な地主から先住民を追放するために雇われる。チリ人と白人を両親に持つセグンドは、イギリス人中尉のマクレナンとアメリカ人傭兵のビルと行動する中で、国家を築くには血と嘘が代償となることを知る。

【ここに注目】
チリ出身のフェリペ・ガルベス監督の長編デビュー作で、20世紀初頭のチリを舞台にした歴史ドラマ。先住民を殺すために雇われた3人の姿を、白人と先住民の間に生まれた若者の視点で描く。『アフガン・レポート』などのマーク・スタンリーほか、カミロ・アランシビア、ベンジャミン・ウェストフォールらが出演。5月に行われた第76回カンヌ国際映画祭のある視点部門で上映され、FIPRESCI賞(国際映画批評家連盟賞)を受賞した。

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『わたくしどもは。』

製作国:日本
監督:富名哲也
キャスト:小松菜奈松田龍平

【ストーリー】
佐渡島の金山跡地。過去の記憶を失った女性が、彼女と同じように記憶のない男性と出会い、惹かれ合うようになる。

【ここに注目】
佐渡島を舞台に、松田龍平と小松菜奈が記憶をなくした男女を演じる物語。メガホンを取った富名哲也監督は、ロンドンフィルムスクールで映画を学び、2018年に初長編監督作品『Blue Wind Blows』がベルリン国際映画祭ジェネレーション・コンペティション部門で上映された新鋭。本作はベネチア国際映画祭によるプロジェクト「Biennale College Cinema 2018-2019」で、インターナショナル部門9作品のうち日本から唯一選ばれた企画となっている。

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