2020年 第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門18作品紹介

第70回ベルリン国際映画祭

 2月20日~3月1日(現地時間)に開催される第70回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門18作品を紹介。70回目という記念すべき年の審査委員長を務めるのは、『ジャスティス・リーグ』の執事アルフレッド役などでも知られるオスカー俳優ジェレミー・アイアンズ。ベルリン国際映画祭らしく、メッセージ性の強い作品や自分自身と向き合う内容の作品が多く揃った本年。金熊賞は誰の手に!?(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)

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<金熊賞>『ゼア・イズ・ノー・イーヴル(英題) / There Is No Evil』

ゼア・イズ・ノー・イーヴル
(C) Cosmopol Film

製作国:ドイツ、チェコ、イラン
監督:モハマド・ラスロフ

【ストーリー】
独裁政権下で制限されがちな個人の権利や自由をどの程度まで人は許容できるのか。逆に自由が束縛されるのを前提とした独裁が人に与える恐怖など、道徳的モラルや死刑論といった人間が「人」として生きていくために大切な基準となる問題を提示する4つのストーリー。

【ここに注目】
ドイツ、チェコ、イラン合作により、イラン人監督のモハマド・ラスロフ監督がメガホンをとって描く問題作。今もさまざまな事柄が国家によって制限される祖国イランの状況も鑑み、人間としての尊厳や表現の自由についての根源的な疑問を観客に問いかける。第二次世界大戦中、アメリカに亡命したユダヤ人哲学者のハンナ・アーレントが提言した“悪の凡庸さ”を彷彿とさせる秀作が、社会派作品の発掘に力を入れる今映画祭でどのように評価されるかが楽しみだ。

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<審査員賞>『ネヴァー・レアリー・サムタイムズ・オールウェイズ(原題) / Never Rarely Sometimes Always』

ネヴァー・レアリー・サムタイムズ・オールウェイズ
(C) 2019 Courtesy of Focus Features

製作国:アメリカ
監督:イライザ・ヒットマン
キャスト:シドニー・フラニガンタリア・ライダー

【ストーリー】
ペンシルベニア州の田舎町に住むティーンエイジャーの少女に、思いがけない妊娠が発覚する。望まない妊娠に戸惑う少女は、親友と共に医療措置を求めてわずかな資金を手に大都会ニューヨークへと向かう。

【ここに注目】
2012年にアイルランドに住むインド人妊婦が感染症で命の危険があったにもかかわらず、病院で中絶処置を拒否されて死亡した事件に着想を得たイライザ・ヒットマン監督が映画化。ヒットマン監督は、中絶手術を受けるため他国へ渡った女性たちの旅路に思いを寄せ、その苦しみを掘り下げようとこの映画を完成させた。シドニー・フラニガンとタリア・ライダーが2人の少女にふんする。

<最優秀監督賞>ホン・サンス『ザ・ウーマン・フー・ラン(英題) / The Woman Who Ran』

ザ・ウーマン・フー・ラン
(C) Jeonwonsa Film Co. Production

製作国:韓国
監督:ホン・サンス
キャスト:キム・ミニソ・ヨンファ

【ストーリー】
結婚してからというもの、一度も夫と離れて過ごしたことがなかった女性が、夫が出張中に、疎遠になっていた古い友達3人と再会する。

【ここに注目】
正しい日 間違えた日』(2015)、『クレアのカメラ』(2017)、『それから』(2017)などで知られる韓国の名匠ホン・サンスの24本目となる長編。ホン監督が公私ともにパートナーである女優キム・ミニと7度目のタッグを組み、ほかにソ・ヨンファ、ソン・ソンミキム・セビョクイ・ウンミが共演した。ホン監督の本映画祭コンペ部門出品はこれが4回目で、前回の『夜の浜辺でひとり』(2017)ではキム・ミニが第67回ベルリン国際映画祭女優賞を受賞した。

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<最優秀女優賞>パウラ・ベーア『ウンディーネ(原題) / Undine』

ウンディーネ
(C) Christian Schulz / Schramm Film

製作国:ドイツ、フランス
監督:クリスティアン・ペッツォルト
キャスト:パウラ・ベーアフランツ・ロゴフスキ

【ストーリー】
ウンディーネはベルリンでガイドの仕事をしていたが、恋人が心変わりをし、他の女性の元へ去ってしまう。実は水の精霊である彼女は、自分を裏切った恋人を殺し、召喚された水域に戻らなければならなかった。だが、彼女は自分の運命から逃れようともがき、恋人と別れた直後に出会ったクリストフという男性と恋に落ちる。

【ここに注目】
未来を乗り換えた男』(2018)でもタッグを組んだクリスティアン・ペッツォルト監督とドイツの演技派女優パウラ・ベーアが放つ異色ラブストーリー。水の精霊ウンディーネの神話をベースにしながら、自身の運命から逃れようと悪戦苦闘するヒロインの姿を活写する。ヒロインを演じるパウラは、第73回ベネチア国際映画祭で新人俳優賞に当たるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。本映画祭では第62回に『東ベルリンから来た女』(2012)で最優秀監督賞を受賞している実力派監督が、金熊賞受賞に向けて邁進する。

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<最優秀男優賞>エリオ・ジェルマーノ『ヒドゥン・アウェイ(英題) / Hidden Away』

ヒドゥン・アウェイ
(C) Chico De Luigi

製作国:イタリア
監督:ジョルジョ・ディリッティ
キャスト:エリオ・ジェルマーノ

【ストーリー】
“イタリアのゴッホ”“悲劇の印象派画家”と呼ばれた、スイス生まれのイタリア人画家アントニオ・リガブエ。貧困に苦しみながら芸術への情熱を燃やし続けたアウトサイダーな芸術家人生とは……。

【ここに注目】
やがて来たる者へ』(2009)のジョルジョ・ディリッティ監督が画家アントニオ・リガブエの生涯を映画化した伝記映画。精神の病に苦しんだリガブエは、自らの現実から逃避するように、トラやヒョウ、ライオンといった生命力あふれる動物の絵を描いた。『ナポリの隣人』(2017)のエリオ・ジェルマーノが主人公のリガブエにふんし、その圧倒的な存在感を見せつける。

<最優秀脚本賞>ダミアーノ&ファビオ・ディノチェンツォ『バッド・テールズ(英題) / Bad Tales』

バッド・テールズ
(C) Pepito Produzioni / Amka Film Production

製作国:イタリア、スイス
監督:ダミアーノ&ファビオ・ディノチェンツォ
キャスト:エリオ・ジェルマーノ、バルバラ・キキアレッリ

【ストーリー】
ローマ南部の郊外に住むとある家族。一見ごく普通の家族のようだが、父親の静かで狡猾なサディズム、父親に言いなりの母親、そして絶望を感じている子どもの怒りがうずまいていた。11歳の子どもの視点で語られる暗いおとぎ話。

【ここに注目】
イタリア出身の双子監督、ダミアーノ&ファビオ・ディノチェンツォの長編2作目。デビュー作『ボーイズ・クライ(英題) / Boys Cry』が第68回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映され、マッテオ・ガローネ監督の『ドッグマン』(2018)では共同脚本に名を連ねた。『我らの生活』(2010)で第63回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞したエリオ・ジェルマーノが主演を務める。

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<芸術貢献賞>『ダウ・ナターシャ(原題) / DAU. Natasha』

ダウ・ナターシャ
(C) Phenomen Film

製作国:ドイツ、ウクライナ、イギリス、ロシア
監督:イリヤ・クルザノフスキーエカテリーナ・エルテル
キャスト:ナタリア・ベレズナヤオルガ・シュカバルニャ

【ストーリー】
ソビエト連邦の極秘研究機関の中にある食堂で働くナターシャ。酒好きで愛を語ることが大好きな彼女は、ある相手にのめり込んでいくが、国の安全を守る部署が介入して……。

【ここに注目】
ロシアの気鋭イリヤ・クルザノフスキーと、メイクアップアーティストのエカテリーナ・エルテルが共同監督。もともとは2006年に、クルザノフスキーがノーベル賞物理学賞を受賞したロシアの物理学者レフ・ランダウの伝記映画として立ち上げた企画で、歳月を経て2019年に極秘の研究所で働く人々を描いた『ダウ(原題) / Dau』として公開された。本作はエルテルと組んでさらに再構築した異色作。

<第70回ベルリナーレ>『デリート・ヒストリー(英題) / Delete History』

ザ・ウーマン・フー・ラン
(C) Les Films du Worso / No Money Productions

製作国:フランス、ベルギー
監督:ブノワ・ドゥレピーヌギュスタヴ・ケルヴェン
キャスト:ブランシュ・ガールディンドゥニ・ポダリデス

【ストーリー】
田舎の分譲住宅に暮らすマリーはセックステープをネタに恐喝され、ベルトランは娘がネット上でいじめられ、運転手のクリスティヌはネットに書き込まれた客の評価のせいで仕事ができずにいた。3人はインターネット巨大企業と戦うことを決意する。

【ここに注目】
共に俳優でもあるブノワ・ドゥレピーヌとギュスタヴ・ケルヴェンのコンビによる9作目の長編で、ベルリン国際映画祭コンペティション部門は2010年の『マムート』以来2度目の挑戦となる。『12か月の未来図』(2017)のドゥニ・ポダリデスなどがメインキャストに名を連ね、最新テクノロジーやソーシャルネットワークに戦いを挑む登場人物を演じる。

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