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2022年 第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門18作品紹介

第72回ベルリン国際映画祭

第72回ベルリン国際映画祭
第72回ベルリン国際映画祭ポスター - (C)Internationale Filmfestspiele Berlin / Claudia Schramke, Berlin

 2月10日~2月20日(現地時間)に開催される第72回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門18作品を紹介。今年の審査委員長は、映画『シックス・センス』『スプリット』などのM・ナイト・シャマラン監督が務め、また『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』の濱口竜介監督が審査委員に名を連ねる。日本からはエンカウンターズ部門に三宅唱監督の『ケイコ 目を澄ませて』が、ジェネレーション部門に川和田恵真監督の『マイスモールランド』が出品される。ジェネレーション部門からも最高賞の金熊賞が選ばれる可能性もある中で、栄冠はどの作品に輝くか!?(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)

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<金熊賞>『アルカラス(原題) / Alcarras』

Alcarras
『アルカラス(原題) / Alcarras』より - (C)LluisTudela

製作国:スペイン/イタリア
監督:カルラ・シモン

【ストーリー】
スペイン・カタルーニャ州リェイダにある広大な果樹園のオーナーが、桃の樹を伐採(ばっさい)してソーラーパネルを設置する計画を明かす。生活の糧を失うことになった農家の家族は、最後の桃の収穫のため集まり、それぞれに苦い思いをかみしめる。

【ここに注目】
悲しみに、こんにちは』(2017)で第67回本映画祭新人監督賞を受賞し、同作が第90回アカデミー賞外国語映画賞スペイン代表にも選ばれた、カルラ・シモンの長編監督第2作。アーナウ・ビラオと共同脚本を務めた本作は、シモン監督が自身の幼少期を題材に、カタルーニャ地方の小村に暮らす桃農家の葛藤を描いた。カタルーニャでは優秀な新世代の女性監督が次々登場しており、なかでもシモン監督はひときわ気になる存在だ。

<審査員グランプリ>『ザ・ノベリスツ・フィルム(英題) / The Novelist's Film』

The Novelist's Film
『ザ・ノベリスツ・フィルム(英題) / The Novelist's Film』より - (C)Jeonwonsa Film Co. Production

製作国:韓国
監督:ホン・サンス

【ストーリー】
小説家のジュンヒは、行方がわからなくなった後輩の本屋を訪ねる長い道のりの途中で、偶然映画監督夫妻に出会い、一緒に公園を散歩する。散歩の途中で女優と出会ったジュンヒは、自分と共に映画を撮らないかと持ちかけて彼女を説得しようとし、食事をした後二人で本屋へと向かう。

【ここに注目】
逃げた女』(2020)で最優秀監督賞、『イントロダクション(英題) / Introduction』(2021)で最優秀脚本賞に輝き、今回3年連続本映画祭に招待されたホン・サンス監督による人間ドラマ。ミニマムなスタイルで人間の深層心理に迫る監督の手腕は健在で、小説家が本屋を訪ねて行く道中でさまざまな人々と出会う姿をモノクロームの映像で描写する。第74回カンヌ国際映画祭のカンヌ・プルミエール部門に出品された『あなたの顔の前で』(2021)でもホン監督と組んだイ・ヘヨン、『逃げた女』などのキム・ミニら最強タッグによる芝居に期待がかかる。

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<審査員賞>『ロブ・オブ・ジェムス(原題) / Robe of Gems』

Robe of Gems
『ロブ・オブ・ジェムス(原題) / Robe of Gems』より - (C)Visit Films

製作国:メキシコ/アルゼンチン/アメリカ
監督:ナタリア・ロペス・ガヤルド

【ストーリー】
離婚調停中のイザベルは、以前家族が所有していた田舎の古い屋敷に引っ越し、メイドのマルタの妹が行方不明だと知る。警察署長のロベルタが捜索の指揮を執る中、マルタが生計を立てるために地元の麻薬カルテルの仕事をしていることを知るイザベルは、何も知らずに捜査を続けるロベルタとマルタの間で苦悩する。

【ここに注目】
カルロス・レイガダス監督の『われらの時代』(2018)で主人公を演じた、ナタリア・ロペス・ガヤルドの長編監督デビュー作。麻薬カルテルと深い関係を持つ町を舞台に、行方がわからなくなった女性と、彼女を取り巻く3人の女性たちの苦難の日々を描き出す。編集者として、リサンドロ・アロンソ監督、ヴィゴ・モーテンセン主演の『約束の地』(2014)をはじめ、カルロス・レイガダス監督の『闇のあとの光』(2012)、アマト・エスカランテ監督の『エリ』(2013)などの作品に携わってきた、ガヤルド監督の真価が問われる。

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<最優秀監督賞>クレール・ドゥニ『ボース・サイズ・オブ・ザ・ブレード(英題) / Both Sides of the Blade』

Both Sides of the Blade
『ボース・サイズ・オブ・ザ・ブレード(英題) / Both Sides of the Blade』より - (C)Curiosa Films 2022

製作国:フランス
監督:クレール・ドゥニ

【ストーリー】
10年前から同棲しているジャンとサラ。2人が出会ったころ、ジャンはプロのラグビー選手で、サラは彼の親友でファンのフランソワと暮らしていた。ある日、街でフランソワを見かけたサラは、人生が変わる予感がする。そんな折、フランソワがジャンに一緒に仕事をしようと持ちかける。

【ここに注目】
『ネネットとボニ』(1996)、『ガーゴイル』(2001)などのクレール・ドゥニ監督によるラブロマンス。ジュリエット・ビノシュヴァンサン・ランドングレゴワール・コランといった、ドゥニ監督作品に出演経験のある実力派俳優たちによる大人の三角関係が繰り広げられる。なお、ジュリエット・ビノシュと俳優ブノワ・マジメルの娘、ハナ・マジメルが本作で女優デビュー。母娘で登場するレッドカーペットも注目を浴びそう。

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<最優秀主演賞>メルテム・キャプテン<最優秀脚本賞>ライラ・シュティーラー『ラビエ・クルナズ vs. ジョージ・W・ブッシュ(英題) / Rabiye Kurnaz vs. George W.Bush』

Rabiye Kurnaz vs. George W.Bush
『ラビエ・クルナズ vs. ジョージ・W・ブッシュ(英題) / Rabiye Kurnaz vs. George W.Bush』より - (C)Andreas Hoefer / Pandora Film

製作国:ドイツ/フランス
監督:アンドレアス・ドレーゼン

【ストーリー】
ドイツのブレーメンに暮らすトルコ人の主婦ラビエ・クルナズの息子、ムラートはテロリストの嫌疑をかけられ、アメリカのグアンタナモ湾収容キャンプに収容される。母ラビエは息子の解放を求め、人権派弁護士のベルンハルト・ドッケと共にワシントンD.C.の最高裁まで行き、ジョージ・W・ブッシュ元大統領を提訴する。

【ここに注目】
2001年から約5年にわたってアメリカのグアンタナモ湾収容キャンプに拘束されたドイツ在住のトルコ人、ムラート・クルナズ氏の実話を基に、母親と弁護士の戦いを、ユーモアを交えて描いたドラマ。監督は『グリル・ポイント(英題) / Grill Point』(2002)で本映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞し、前作『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(2018)がドイツ映画賞で最優秀作品賞など6部門を制したアンドレアス・ドレーゼン。『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』の主演俳優アレクサンダー・シェーアが主人公に付き添う弁護士を演じる。

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<最優秀助演賞>ローラ・バスキ『ビフォア、ナウ&ゼン(英題) / Before, Now & Then』

Before, Now & Then
『ビフォア、ナウ&ゼン(英題) / Before, Now & Then』より - (C)Batara Goempar

製作国:インドネシア
監督:カミラ・アンディニ

【ストーリー】
インドネシア独立戦争後、政府軍と左翼グループが対立を深めていた激動の1960年代、紛争によって夫と子供を亡くした女性の生活は困窮していた。彼女は裕福な男性と再婚してようやく自分の居場所を見つけるが、家父長制の下では女性の立場は弱く、彼女は夫が囲った愛人の一人と心を通わせる。

【ここに注目】
インドネシアの小説家アフダ・イムランの小説「イエ・デルケン・ナマク」の一章をモチーフに、1960年代を駆け抜けたラーデン・ナナ・スナニの人生を映し出す。インドネシアを代表する映画監督ガリン・ヌグロホの娘で、『鏡は嘘をつかない』(2011)などのカミラ・アンディニが監督を務め、ナナという名前のごく普通の女性の物語を紡いでいく。『見えるもの、見えざるもの』(2017)では本映画祭ジェネレーションKプラス部門にも選出されたが、コンペティション部門への参加は初めてとなる、東南アジアの女性監督ならではの視点でとらえた、独創的なアプローチに熱い視線が注がれる。

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<芸術貢献賞>リティ・パニュ、サリット・マング 『エブリシング・ウィル・ビー・オーケー(原題) / Everything Will Be Ok』

Everything Will Be Ok
『エブリシング・ウィル・ビー・オーケー(原題) / Everything Will Be Ok』より - (C)CDP, Anupheap Production

製作国:フランス/カンボジア
監督:リティ・パニュ

【ストーリー】
もし動物が権力を持っていたら? 人間のように振る舞い、人間と同じような過ちを犯すだろうか。権力のために争いを起こしたり、恐怖で支配したり、ありとあらゆるすべてを滅ぼしたりするだろうか。芸術で何を表現するのだろうか。地球はより平和になるだろうか。

【ここに注目】
消えた画(え) クメール・ルージュの真実』(2013)が第66回カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリを受賞し、第86回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされたカンボジアのリティ・パニュ監督の人形とストップモーションの手法を用いた新作ドキュメンタリー。前作『照射されたものたち』(2020)は、第70回本映画祭コンペティション部門ドキュメンタリー作品賞を受賞した。本作のタイトルはミャンマーの軍事クーデターに反対するデモで命を落とした少年のTシャツに書かれていたスローガンから取ったもので、全体主義、民主主義、コミュニケーションの新しい形など多彩なテーマを扱っているという。

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<スペシャルメンション>『ア・ピース・オブ・スカイ(英題) / A Piece of Sky』

A Piece of Sky
『ア・ピース・オブ・スカイ(英題) / A Piece of Sky』より - (C)Armin Dierolf / hugofilm

製作国:スイス/ドイツ
監督:ミヒャエル・コッホ

【ストーリー】
アルプス山脈の小さな村で、かつての恋人との間に生まれた娘を育てるアンナ。山の荒れた土地で農業をするため、村にやって来たマルコ。若い2人は恋に落ちるが、マルコが常軌を逸した言動をとるようになり、脳腫瘍を患っていることがわかる。

【ここに注目】
スイス人のミヒャエル・コッホが監督・脚本を務めた本作は、アルプス山脈にある小村が舞台。困難に直面し絆を試されるアンナとマルコを描くドラマで、ミシェル・ブランドサイモン・ウィスラーが主演した。閉鎖的なコミュニティー、過酷な自然と向き合いながら、マルコとの生活を守ろうと奮闘するアンナの姿に、俳優でもあるコッホ監督がどんな視線を注いでいるのか期待がかかる。

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