故郷パレスチナと「ほぼ同じ」な光景がシュールに提示される

『D.I.』(02年)の必然的な反転。「過去の私の映画が、パレスチナを世界の縮図として描くことを目指していたなら、今回は世界をパレスチナの縮図として提示しようとしている」――このスレイマン本人の解説が全てだろう。急速に進むグローバリズムに対する、ローカリズム≒アイデンティティの混乱。それでもパリやNYでは「パレスチナ独特の何か」を求められる皮肉。
ちなみにG・ガルシア・ベルナルが本人役で登場。映画会社のロビーでプロデューサー(X・ドラン作品の製作で知られるナンシー・グラント)に言い間違いでルビッチの『天国は待ってくれる』(43年)に触れるが、スレイマンは同様応用の洒脱を意識しているのでは。