マイルス・デイヴィス　クールの誕生 (2019)：映画短評

ジャズに革命を起こしたマイルス・デイヴィスの功績を、彼の音楽と写真、映像をたっぷりと使って振り返るドキュメンタリー。誕生から亡くなるまでを時系列で語る手法はスタンダードながら、黒人監督であるスタンリー・ネルソンは、並行してアメリカの歴史もたどっていく。その中では、今再燃している警察による黒人への暴力や、それが被害者にどんな傷を与えるのかにも触れられる。パリでさんざんちやほやされた後、人種差別のひどいアメリカに戻ってきたくなかったという部分も、重くのしかかる。依存症など深刻な問題に何度か直面しては立ち上がった、生身の人間の弱さと強さを語る物語でもある。