ゼンタイ (2013):映画短評
ゼンタイ (2013)『ハッシュ!』のファンは必見ですよ!
ちょっとでも気になった人には是非観ていただきたい。ワークショップ(実践型の演技講座)から生まれた自主製作スタイルの映画で、62分の小品だが、『渚のシンドバッド』『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』と大玉の傑作を放ち続ける橋口亮輔監督が肩の力を抜いて作った良さがしっかり味わえる。
「ゼンタイ」とは全身タイツを身にまとった姿で、一切の社会的属性に囚われないコミュニケーションを愛好する人々のこと。そのオフ会を一挿話とした全6話のオムニバス構成で、全体のテーマとしては、息苦しい現代社会で生き難さを抱えた人たちへの慎ましい応援歌といったところ。特に「コンパニオン」「レジ店員」「主婦」など、女性に向ける視線は厳しくも優しい。
我々の日常生活は至るところでバトル・ロワイアルが繰り広げられる。ひとたび集団を形成すれば力関係や序列が発生し、余計なプライド、自意識、疎外感に苛まれる。でも本当は、そんなくだらない争いから誰もが解放されたいと願っているのではないか。実存に深く刺さる内容を泣き笑いのコメディに仕立てる腕は、さすが『ハッシュ!』の監督。企画物とか番外編で済ませるのはもったいない!