なかざわひでゆき

なかざわひでゆき

略歴: 日本大学芸術学部映画学科卒、同学部大学院卒。映画・海外ドラマのライターとしてキャリア30年。TVガイド誌やオンライン情報サイトなどを中心に幅広く執筆活動中。雑誌「スカパー!TVガイドBS+CS」(東京ニュース通信社刊)で15年続くコラム“映画女優LOVE”をはじめ各テレビガイド誌で特集記事やコラムを執筆。著書は「ホラー映画クロニクル」(扶桑社刊)、「アメリカンTVドラマ50年」(共同通信社刊)など。海外取材経験も多数。旧ソ連のモスクワ育ち。

近況: 目下のところBabyMonsterとTXTにドハマリ中。まさか高校生の姪っ子と推しが被ることになるとは…(^^;

サイト: http://eiga3mai.exblog.jp/

なかざわひでゆき さんの映画短評

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  • オッペンハイマー
    才能と情熱は時として諸刃の剣となる
    ★★★★

     天才的な物理学者にして、「マンハッタン計画」を主導した原爆の生みの親オッペンハイマーの半生を、鬼才クリストファー・ノーランが映画化した作品。本編とは全く関係のないバーベンハイマー騒動の悪しき影響もあってか、日本公開前から一部の的外れな偏った批判が先行してしまったのは残念だが、時として諸刃の剣となりかねない才能や探求心の危うさ、最先端技術が創造主の手を離れて政治的に利用されてしまうことの怖さを、ノーラン監督らしい多角的な視点と巧妙に計算された構成で描き切る。3時間の長尺も殆んど苦にならないのは立派。トム・コンティやマシュー・モディーンなど懐かしい役者の登場も嬉しい。

  • パリ・ブレスト ~夢をかなえたスイーツ~
    実在する有名パティシエの決して甘くないサクセス・ストーリー
    ★★★★

     アラブ系フランス人の有名パティシエ、サジッド・イシュムラエンの半生を描いたサクセス・ストーリー。人種差別に貧困に複雑な家庭環境にと、生まれた時から本人の力だけではどうにもならないハンデを背負った主人公が、夢を叶えるためなら手段を選ばぬ覚悟で人生を切り拓いていく。見るからに華やかで美味しそうな高級スイーツが全編をカラフルに彩る作品だが、しかしみんなと同じスタート地点にすら立てない若者の成り上がりドラマは決して甘くない。良き母親になりたくても境遇がそれを許さず、己の無力感に苛まれる主人公の母親の苦悩にも思わず涙。それだけに、努力が実を結ぶハッピーエンドには感無量である。

  • ペナルティループ
    またもやタイムループ物…と侮るなかれ
    ★★★★

     恋人を殺された若者が犯人を殺害して復讐を果たすものの、気が付くと同じ日の朝に時間が戻っており、若者は何度も繰り返し犯人を殺すことになるのだが、そのうち彼の心境に変化が生じていく。復讐の是非を問う映画は古今東西少なくないが、仕掛けとしてタイムループを使った作品は珍しいだろう。とはいえ、またか…といった感じのタイムループ物ではあるものの、しかしこのシニカルなユーモアとほろ苦い切なさの入り混じった中盤からの展開は全くの予想外で、それこそ『ミステリー・ゾーン』の良質なエピソードを見た時のような味わいがある。

  • 美と殺戮のすべて
    権力者の不正に声をあげ続けねばならぬ理由
    ★★★★

     全米で50万人以上が亡くなった「オピオイド危機」。その元凶とされるオピオイド系鎮痛薬オキシコンチンの製造会社パーデューを経営し、中毒性の高さを隠して大量販売した大富豪サックラー家。彼らの許されざる罪を糾弾する大物写真家ナン・ゴールディンの活動を記録しつつ、同時にその半生を紐解くことで彼女の「戦う理由」に焦点を当てたドキュメンタリーだ。まだ米社会が保守的だった’60年代に奔放すぎる姉がそれゆえ自殺へ追い込まれ、’80年代のエイズ禍における政府の無策で大勢の友人を失った彼女は、声を上げ続けなければ権力者にとって不都合な真実は簡単に葬り去られてしまうと危惧する。その気概は今の日本人にも絶対必要だ。

  • 成功したオタク
    罪を犯した「推し」、その事実にファンはどう向き合うべきか?
    ★★★★★

     成功したオタクとは「推し」の芸能人からも認知されるファンのこと。本作のオ・セヨン監督もそうだったという。彼女の推しは’19年に韓国で問題となった性加害事件に関与した男性芸能人のひとりチョン・ジュニョン。罪を犯した推しに対する、怒りと悲しみと後悔の入り交じった複雑な感情。他のファンはどう折り合いをつけているのか?これは、自分と同じく推しに裏切られた女性たちへ取材した監督が、ファンとしてその事実とどう向き合うべきなのか?を考察したドキュメンタリーだ。強く感じるのは韓国女性のフェミニズム的な人権意識の高さ。日本でも芸能界の性暴力が問題視されているが、向こうは一歩先を行っているなとの印象を受ける。

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