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18禁指定の『ブロンド』賛否両論、アナに称賛の声

大注目のアナ・デ・アルマス!
大注目のアナ・デ・アルマス! - Axelle / Bauer-Griffin / FilmMagic / Getty Images

 Netflixで配信中の映画『ブロンド』(アメリカではNC-17、日本では18+指定)が論議を呼んでいる。キューバ出身で英語を母国語としないアナ・デ・アルマスマリリン・モンロー役に起用した時からさまざまな意見が聞かれたが、ふたを開けてみると彼女の演技は大好評。評価が分かれるのは、モンローの描かれ方。アメリカでは非常にセンシティブなトピックである妊娠中絶の要素も物議を醸し出す(※一部ネタバレあり)。(文/猿渡由紀)

【画像】まるで別人!これ全部、アナ・デ・アルマス!

 原作は、ジョイス・キャロル・オーツが書いた同名の小説。これはあくまで“小説”であり、ノンフィクションではない。アンドリュー・ドミニク監督が印象派的なアプローチで本作に挑んだのも、この原作を下敷きにしたからだ。

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 映画は、女優マリリン・モンローになる前の少女ノーマ・ジーンが、母から日常的に苦しめられるところからスタート。会ったことのない父はハリウッドのお偉いさんだと、母から聞かされている。やがて母は精神病棟に入れられ、ノーマは児童保護施設に送り込まれた。大人になり、映画業界に足を踏み入れたノーマは、ハリウッドの大物と無理やり関係を持つことになり、役を得る。その後、2人の男性と親しくなり、3人での関係を楽しんだりもするが、夫となる男性からも、肉体関係を持つことになったケネディ大統領からも、大切に扱ってもらえることはなかった。

 最後には誰もがご存知の通り、悲劇の死を遂げるのだが、その本当の原因や状況について深く突っ込むことはしない。そこがドミニク監督が意図したことであるのは疑いない。彼女の死を探索するものは過去に多数あり、今年前半にも、やはりNetflixが『知られざるマリリン・モンロー:残されたテープ』を配信したばかりだ。

 しかし、人生でずっと性の対象と見られ、男たちからひどい扱いを受けた挙句に薬物に依存することになって死に至ったという彼女の描かれ方に強い抵抗を持つ人は少なくない。L.A. TIMES のエンタメコラムニスト、メアリー・マクナマラは、「『ブロンド』はひとことで言うとヘイトクライム」「2時間以上にわたってデ・アルマス演じる女性がトラウマと不幸に苦しみ、最後に自殺するのを見た観客が唯一感じるのは、『どうしてもっと早くそれをやらなかったのか』ということだろう」と批判した。

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 New York Times の映画批評家マノーラ・ダージスも、この映画に出てくるマリリンは「犠牲者以外の何者でもない」「男たちの餌食」「実在のマリリンは女友だちがいたのに、この映画ではいない」などと指摘。実在の彼女は頭が良く、ウィットに富む、才能あふれる女性だったのにそこが完全に欠けているとして、「ドミニク監督はマリリン・モンローの映画を1本でも見たことがあるのか」と疑問を投げかけた。彼女は「今作は芸術的なゴミ。失われた機会」とまで言い切る。

 この映画に抵抗を覚えたのは、批評家だけではない。本作でマリリンが妊娠中絶をする様子がかなりショッキングな形で描かれることに対して、妊娠中絶を扱うアメリカの医療施設プランド・ペアレントフッドが抗議の声を上げたのだ。

 今年に入って保守的な州の多くで妊娠中絶が事実上禁止となる動きが加速しているアメリカで、これは最もホットなトピック。プランド・ペアレントフッドは、この映画に2度の不法な中絶のシーンが出てくることに加え、生まれてこられなかった胎児がモンローに「今度は私を傷つけないでしょ?」と中絶することに罪悪感を覚えさせるような描かれ方がなされていることを批判。「プランド・ペアレントフッドはアーティストの自由に敬意を払います。しかし、間違った描写は性と妊娠についての誤解と偏見を増長させることになります」と、声明で述べている。

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 だが、そういった批判をする人たちも、アナには優しい。業界コラムニストのデビッド・ポーランドは、「細かい演出を受けた役者ができることの中で、彼女は最高のことをやっている」と評価。「彼女の訛りを指摘する人は、重箱の隅を突いているだけ。うっかり訛りが出てきたことはほとんどない。その批判はばからしい」と書いた。

 New York Post のジョニー・オレクシンスキも、アナには「モンローと同じくらいのカリスマがある」「彼女の演技は生々しく、正直」と絶賛。Observerのマーク・カーモードも、「デ・アルマスが全力を注いだのはたしかで、それはすごいことだ」「映画自体は自己満足で好奇心がゼロでも、彼女の演技は最高」と褒め称えた。

 事実、彼女は文字通り体を張った演技を見せている。しかも、子役が演じる映画のはじめの方を除けば、2時間47分のこの映画で、彼女はほぼすべてのシーンに登場するのだ。今、超売れっ子のアナにとって、これが代表作になることは間違いない。彼女の演技は間違いなく今作の見どころだ。その意味で、映画ファンとしてはぜひ観ておいて損はない1作と言えるだろう。

Netflix映画『ブロンド』独占配信中

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