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“大人も”が大ヒットのキーワード ドラえもん映画シリーズ最高『のび太の宝島』

歴代記録を更新し続けている『映画ドラえもん のび太の宝島』
歴代記録を更新し続けている『映画ドラえもん のび太の宝島』 - (C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

 春休みの風物詩として長年、多くの子供たちに愛されてきた『映画ドラえもん』シリーズ。今年3月3日に公開された『映画ドラえもん のび太の宝島』は、オープニング興行でロケットスタートを切ると、公開から37日間で動員428万人、興行収入48億円を突破し、シリーズ最高動員記録を更新。ここでは、本作がなぜここまで好成績を残しているのか、考察してみたい。

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 『名探偵コナン』シリーズなど、一部例外はあるものの、毎年続くシリーズ作品が、観客動員や興行収入を大幅に伸ばすことは難しいが、『映画ドラえもん のび太の宝島』は、過去の数字を大きく超える勢いをみせている。その一つの要因が、観賞後の満足度の高さだろう。

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 映画というメディアは、以前から鑑賞者の口コミがヒットの重要な要素と言われていたが、近年SNSの普及などにより、その傾向はさらに強くなってきた。観賞後、高い満足度を得られた人が多ければ、プラスの評価は、SNS等を通じて大いに広がる。もちろん、どんな作品でも賛否は出るものだが、本作は概ね、高評価が並んでいる。なかでも「大人も楽しめる」「大人も感動できる」「大人も泣ける」等々、“大人も”というキーワードがよく見受けられる。

 「春休み映画」という公開時期からして「児童」がターゲットであることは間違いないところであり、作り手も「『観たい!』という子供を連れて親が一緒に観に行く」という図式はイメージのなかにあるだろう。しかし今回の作品は、こうした部分にプラスして、連れ添って映画館に来た、父親、母親、祖父、祖母といった大人への劇的欲求も満たすような作りになっている。

 本作の主人公はもちろん、のび太とドラえもんを中心とした子供たちだ。彼らが宝島を探しに旅に出るところから物語は始まり、いつものように、途中さまざまな困難に巻き込まれつつも、諦めない心や仲間の大切さを認識しながら、子供たちが問題を解決していくという『映画ドラえもん』の王道のストーリーが展開していく。

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ドラえもん
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2018

 その一方で、親子関係がクローズアップされる部分がある。そこには「親の子に対する思い」や「大人が子供に伝えたい大切なこと」という視点だけではなく、「子供から見た親への思い」や「大人や親は必ずしも完璧な人間ではない」という子供側からの投げかけも内在している。こうした視点を象徴しているのが、のび太が発した「大人は絶対間違わないの?」というセリフだ。この言葉は、子供よりも大人の胸に突き刺さるのではないだろうか。

 「大人から子供へ」そして「子供から大人へ」という両側面のメッセージ性について、『君の名は。』など数々のヒット作を世に送り出し、本作では脚本という立ち位置で作品に参加した川村元気プロデューサーは、完成披露試写会の壇上で「お子さんに楽しんでいただくのはもちろんですが、一緒に来てくれるご両親やおじいちゃん、おばあちゃんにも楽しんでもらいたいというオファーを受けて書きました」と語っていたように、大人の心にも響くような作りを意識していることがうかがえる。

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 劇場では「子供と観賞したあと、夫婦でもう一度観に来た」という大人同士の鑑賞者も多いという『映画ドラえもん のび太の宝島』。2016年に公開したディズニーアニメーション『ズートピア』は75億円を超える大ヒットを記録したが、この作品もかわいらしい動物たちのビジュアルが子供たちを喜ばせる一方で、非常に深いストーリー性は、多くの“大人も”魅了した。『ズートピア』とは、ジャンルや作品の持つメッセージは違うが、子供のために映画館に行った親が、いつしか自分も夢中になって作品にのめり込んでいる……という状況は似ている。そして、こうした「予期せぬ満足感」というのは、より人に伝えたくなるという効果もある。

 近年のアニメーション映画の大ヒットは、子供はもちろん“大人も”というのがキーワードなのかもしれない。(文・磯部正和)

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