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当局の圧力で中止になる映画祭 中国のインディペンデント映画の未来を悲観

中止に追いやられた北京インディペンデント映画祭の一部始終を描いた『映画のない映画祭』のワン・ウォ監督

 隔年で開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で、2014年に中国当局の圧力によって中止に追いやられた北京インディペンデント映画祭の一部始終を赤裸々に映し出したドキュメンタリー映画『映画のない映画祭』(中国)がアジア千波万波部門で上映され、ワン・ウォ監督が舞台挨拶を行った。

 中国では当局の検閲を受けていない映画は海外映画祭への参加はもちろん、国内市場での上映も不可とされている。そんな中で2006年に北京郊外の芸術家村・宋荘でスタートした北京インディペンデント映画祭は、中国ではなかなか観ることのできない国の内情を赤裸々に描いた刺激的な作品も上映し、さらに貴重な国内外のインディペンデント映像作家の交流の場となっていた。

 当初は当局も静観していたという。しかしSNSなどが盛んになり情報統制が難しくなってきた2011年頃から締め付けが厳しくなってきたようだ。時には映画が上映できないよう地域一帯を停電にするなどの妨害行為もあったという。2014年には強行策を実施。“村民”を名乗る人たちが映画祭事務所に出入りする人たちを暴力を持って排除。さらに責任者は警察へ強制連行されて映画祭中止承諾書に無理矢理サインをさせられた挙げ句、事務所内を捜査され作品アーカイブやパソコンなども全て没収されたという。

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映画のない映画祭
関係者が逮捕され、北京インディペンデント映画祭関係者が抗議活動を行っているシーン『映画のない映画祭』より

 本作はその当局と映画祭の熾烈なバトルを、関係者や参加者、ボランティアなどがスマートフォンなどで撮影した映像を集めてその経緯をつづったものだ。ワン監督は「宋荘という場所はもとは貧しい農村でした。そこに芸術家が集まり、文化豊かな地域に変わった。村人との関係も良好だったのです。それが今は芸術家も出て行かざるを得ない状況になったりしました」と声を鎮める。

 同映画祭は2014年以降、再開の目処はたっていない。それどころか騒動後、約20人が逮捕されて、最長9か月間警察に拘束されていた人もいたという。さらに中国国内で開催されていた同様のインディペンデント映画祭のほとんどが当局の制圧を受けて継続不可能となっている。ワン監督自身もしばらくは、本業のグラフィック・アーティストに集中する予定だという。

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 ワン監督は「私たちは頑張って発表の場を作って来ましたので、今は古い友達がいなくなってしまった気分」と喪失を語る一方で、「国外の映画祭の中には、検閲を受けた作品しか受け付けないところもある。今後中国の自主映画監督たちの表現の場がどんどん少なくなってしまうのではと悲観しています」と現状を訴えた。

 同映画祭では今年、インドネシアの検閲の過程を描いたドキュメンタリー映画『カット』(ハイルン・ニッサ監督)も招待上映された。韓国では先ごろ、李明博政権時代(2008年~2013年)に続いて、朴槿恵政権時代(2013年~2017年)も政権に批判的な文化人のブラックリストを作成していたことが明らかになっており、世界各国で言論の自由を巡る問題が沸き起こっている。(取材・文:中山治美)

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