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第55回『おしん』『トランス』『グランド・イリュージョン』『パッション』『危険なプロット』

今月の5つ星

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シネマトゥデイが選ぶ 今月の5つ星

国民的人気ドラマを映画化した感動作『おしん』『トレインスポッティング』のダニー・ボイル監督&脚本家ジョン・ホッジが再びタッグを組んだサスペンス『トランス』、フランスの鬼才フランソワ・オゾンが、高校の国語教師とその生徒を主人公に描いたサスペンス『危険なプロット』など、万人向けからツウ好みまで、バラエティー豊かな秋映画が勢ぞろい!

10月4日公開 初期のデ・パルマ作品を彷彿させる美女2人の泥沼劇 『パッション』 作品情報

ブライアン・デ・パルマ監督およそ5年ぶりの新作は、フランス人監督アラン・コルノーの遺作のリメイク。上昇志向の金髪キャリアウーマンと黒髪地味っ娘アシスタントが繰り広げる愛憎劇に、『殺しのドレス』『ボディ・ダブル』などのデ・パルマ製官能サスペンスの数々を思い出し、それだけでニンマリ。美女2人による官能プレイや心理戦を、殺人シーンとバレエ公演が同時進行するスプリットスクリーン(分割画面)や長回しなど、技巧を凝らしたビジュアルで彩るその手腕は、72歳にしてデ・パルマ健在を実感させるには十分だ。常識外れのパワハラ上司を演じたレイチェル・マクアダムスと、復讐(ふくしゅう)の鬼となるノオミ・ラパスの相性もバツグン。さらに音楽を手掛けるのが、『キャリー』(1976)『ミッドナイトクロス』など、初期デ・パルマ製スリラーには欠かせないピノ・ドナッジオというのもうれしいところ。ともすれば火サスか昼ドラかといった下世話な泥沼劇を、円熟の域に達した名匠が初期作品を思わせるタッチで描いた、実にぜいたくな一品に仕上がった。(編集部・入倉功一)

『パッション』© 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA
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10月11日公開 現実・記憶・錯覚を織り交ぜたストーリーにのみ込まれる 『トランス』 作品情報

ダニー・ボイル監督最新作は、彼の映画デビュー作にして傑作『シャロウ・グレイブ』を思わせるスリリングなサスペンス。「人間の記憶」をテーマに、推定価格40億円の名画を奪うもその記憶をなくした競売人(ジェームズ・マカヴォイ)、名画を狙うギャング(ヴァンサン・カッセル)、記憶を取り戻す手伝いをする催眠療法士(ロザリオ・ドーソン)という三人の関係が目まぐるしく変化するさまをスタイリッシュな映像と音楽で描き出す。メインとなるのが男2人女1人の関係である点や、スクリーンに目をくぎ付けにする映像と展開のパワフルさなど、もろ『シャロウ・グレイブ』だが、同作から約20年を経ているだけあって完成度はより高まっている。現実・記憶・錯覚を織り交ぜた複雑なストーリーに完璧に筋を通し、いっそう洗練された美的センスで彩りを加えたボイル監督の手腕は見事の一言で、息を詰めるあまり映画を観ているということを忘れてしまうほど。俳優陣もそれぞれ近年のキャリアで最高といっても過言ではない名演を披露しており、中でも「いい人」という枠にとどまらない妖しげな魅力を振りまくジェームズのハマりっぷりは最高だ。(編集部・市川遥)

『トランス』©2013 Twentieth Century Fox
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10月12日公開 残酷にして前向きなストーリーが、時代を超えて胸に刺さる 『おしん』 作品情報

「おすんはまだ七つでねえか」とすがる祖母の声もかき消され、口減らしのために奉公に出されたおしん(濱田ここね)の物語が、NHKの連続テレビ小説の放映開始から30年を経てスクリーンによみがえった。1番目の奉公先では、鬼のような女中頭(岸本加世子)にしごかれたあげく盗みの疑いを掛けられて丸裸にされ、2番目の奉公先では同年代のお嬢様(井頭愛海)の反発に遭い、またしても盗みの疑いを掛けられる。奴隷同然の暮らしにもめげず、けなげに頑張るにもかかわらず、おしんに降り掛かる試練はあまりに過酷だ。それでも前を向き続ける少女の姿には、時代を超えて誰もが勇気づけられると同時に、「子どもらしさ」を奪われ、生きるために大人にならざるを得なかった彼女の喪失感をも思い知らされる。そんな中で、いちるの光をもたらすのが、奉公先から実家に戻ったおしんが眠りから目覚めたときに目にする光景だ。土間で黙々とご飯の支度をする母親(上戸彩)、鍋から立ち上る湯気。当たり前に思っていた日常が何と輝いて見えることか。おしんにとって、この瞬間こそが人生で最も幸福なのかもしれないと言っているかのような切ないラストが秀逸だ。(編集部・石井百合子)

『おしん』©2013「おしん」製作委員会
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10月19日公開 少年の作文につづられる話が現実とリンクする構成の妙 『危険なプロット』 作品情報

老夫婦がピチピチの男子高校生を利用して刺激的な日常を取り戻す話……かと思いきや、そこはフランスの名匠フランソワ・オゾン。代表作『スイミング・プール』などでも魅せた洗練極まるアングルや間、透明感漂う空気を伴いながら、16歳の少年の成長物語の裏にある大人のあざとさ、身勝手さを浮き彫りにするようなストーリーテリングが秀逸。老夫婦をとりこにし、作品全体をつなぐ役割も持つ少年の優れた「作文」という2次元を、映画という人間ドラマの「3次元」に掛け合わせて普段は見落としがちな心の隙間や深層心理を描いている。少年の作文につづられる話が現実とリンクする構成から、見終わったときに「人生はフィクションのようなもの」と言われているような気がするから不思議。(編集部・小松芙未)

『危険なプロット』©2012 Mandarin Cinema - Mars Films - France 2 Cinema - Foz
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10月25日公開 さまざまな伏線が瞬く間に回収されるクライマックスが圧巻 『グランド・イリュージョン』 作品情報

イリュージョンを駆使するマジシャンたちが破天荒な犯罪に挑むという、トリッキーかつスタイリッシュなサスペンス。『スティング』『オーシャンズ11』といった傑作が並ぶコンゲーム映画の系譜に連なる一作だ。この手の映画にありがちな出し惜しみは一切なく、開始早々「ラスベガスにいながらにしてパリの銀行から大金を奪う」マジックの種明かしをしてしまうなど、サービス精神たっぷりな話運びは観客を最後まで飽きさせない。クライマックスでさまざまな伏線が瞬く間に回収されるに至って、観客はようやく『グランド・イリュージョン』という作品自体が、彼らをだまそうとする一つの大掛かりなマジックだったことに気が付くはずだ。ただし、そのマジックが成功したかどうかを決めるのは、観客が「だまされたこと」を楽しめるかどうか。その意味では、痛快かつ爽快なラストが待っている本作は実に見事なマジックといえるだろう。ジェシー・アイゼンバーグをはじめ、マーク・ラファロマイケル・ケインモーガン・フリーマンといった芸達者な俳優陣にも拍手を送りたい。(編集部・福田麗)

『グランド・イリュージョン』©2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
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