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組織解散から多様性重視の新体制へ…ゴールデン・グローブはどう変わった?

第81回ゴールデン・グローブ賞の授賞式は日本時間1月8日に開催予定
第81回ゴールデン・グローブ賞の授賞式は日本時間1月8日に開催予定 - Michael Buckner / Golden Globes 2024 / Golden Globes 2024 via Getty Images

 第81回ゴールデン・グローブ賞の授賞式が1月7日(日本時間8日)に米ロサンゼルスで開催される。今年は日本から、宮崎駿監督(崎はたつさき)の『君たちはどう生きるか』がアニメーション作品賞と音楽賞(久石譲)の2部門ノミネート。アニメーション作品賞には新海誠監督の『すずめの戸締まり』もノミネートされており、ますます注目の授賞式となりそうだ。主催者が変わったほか、授賞式を放映するテレビ局がNBCからCBSに移行、2つの新部門が追加されるなど、大きく変化を迎えたゴールデン・グローブ賞が、今どのように運営されているのかみてみたい。

【画像】2部門でノミネート『君たちはどう生きるか』ギャラリー

 映画とテレビ、両部門における功績を讃える同賞が、ハリウッド外国人映画記者協会(以下、HFPA)によって創立されたのは1944年。毎年1月に開催され、賞レースの幕開けという位置付けで、アカデミー賞の前哨戦として世界的に注目されてきた。しかし3年前、会員に黒人がいないことや、一部の会員の非倫理的な慣行が批判され、HFPAは組織改革をせざるを得なくなる。そして、長年授賞式のテレビ放送を担当してきた制作会社ディック・クラーク・プロダクション(DCP)と投資会社エルドリッジ・インダストリーズ(DPCのオーナー)が、ゴールデン・グローブ賞の全資産と知的財産を買収して営利企業を設立することに同意し、HFPAは解散することになった。

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また、新たに設立されたゴールデン・グローブ財団は、HFPAが過去30年にわたり、エンターテインメント関連の慈善団体や映画修復などに5,500万ドル(約80億円)以上を寄付してきたという歴史を引き継ぐことになった。同財団は、2023-2024年度、恵まれない地域社会や大学を支援する多様な非営利団体や、世界中のジャーナリストを支援するプログラム、映画修復などに500万ドル(約7億2,500万円)の助成金を授与すると発表した。(1ドル145円計算)

投票者の変化

 最大の改善点は、ロサンゼルスを拠点にする100人に満たなかった外国人記者に、インターナショナルな投票者を入れ、賞の投票者数を、2022年9月に200人、2023年10月に300人まで増やしたことだろう。アルメニア、カメルーン、コスタリカ、キューバ、マレーシア、セルビアなどを含む76か国の投票者が含まれており、その内訳は、女性が47%、多様な人種と民族が60%で、ラテン系が26.3%、アジア系が13.3%、黒人が11%、中東系が9%となっている。ちなみに、日本人の投票者は、ロサンゼルス在住の5人に日本在住の10人が加わり、現在合計15人。この投票者の変化は、(映画部門における)脚本賞の半分が女性、監督賞2人が女性、非英語映画部門の3本がドラマの作品賞に入るといった、今回のノミネーションに現れているようだ。

興行成績を評価する新部門設立

 さて、今年最大の話題は、「興行成績賞」(Cinematic and Box Office Achievement)が新たに設けられたことだ。その年に最も興行収入や視聴回数の多かった作品の中から、世界中の観客に支持され、卓越したクリエイティブなコンテンツの作品がノミネートされるというもの。候補作になる条件は以下のとおり。

・年度末に全世界での興行収入合計が1億5,000万ドル(約218億円)に達し、そのうち1億ドルが米国国内の興行収入であること、および/または、それに匹敵するデジタル・ストリーミング視聴率が、信頼できる業界筋に認められていること。

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・11月22日以降、年末までに公開される作品については、興行成績やストリーミング視聴の予測に基づいて資格を得られる。

・候補作品は、ドラマ部門、コメディー/ミュージカル部門、アニメーション部門、非英語部門の資格要件を満たしていれば、各部門で作品賞候補となることもできる。

・興行収入とストリーミングの視聴回数によって受賞資格が決定され、基準を満たした作品は、その優秀性に基づいて、投票者によってノミネート作品と受賞作が決定される。

・合計8作品がノミネートされる。

 多くの人々に愛され世界的な大ヒットとなった娯楽作品が、賞レースに無縁ということはよくあるが、こういった作品を候補作とすることで、普段は賞番組を見ない層が興味を持つ可能性は高い。コンサート映画『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』の候補入りなどはその好例になりそうだ。視聴率の低下に悩まされている授賞式番組が、視聴者獲得のためにさまざまなことを試みるのは当然だろう。事実、アカデミー賞も2018年に「ポピュラー映画」部門を増やす案が出たが、アカデミー会員の苦情が殺到したことで、棚上げになった。

 もう一つの「スタンダップ・コメディ」賞は、スタンダップ・コメディアン個人や、コメディ・グループ/アンサンブルの一員が授与されるもの。30分以上であること、地上波、ケーブル、配信、ペイ・パー・ビューとどれでも構わないが、個人のSNSアカウントでしか見られない番組は候補になれない。

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 投票は、選考対象期間が1月1日から12月31日までで、映画15部門、テレビ12部門、合計27部門のカテゴリーに対して投票が行われる。ノミネーション時には、投票者に対象となる作品リスト(Reminder List)と共にバロット(票)が送られてきて、「興行成績賞」の8作品以外は、各部門の候補作を6作品ずつ選ぶ(以前より1作品増えた)。その際に優先順位をつけるのだが、それが参考となるのは、投票数がタイになった時だけだ。ノミネーション発表後、最終の投票時には、各カテゴリーから1作品、または1名を選んでいき、最も得票数の多い対象者が受賞する。

 もともとゴールデン・グローブ賞の授賞式は、毎年ザ・ビバリー・ヒルトンの大宴会場で開催される「ハリウッド最高のパーティー」と言われており、候補者たちが飲み食いしながらリラックスして楽しむ賞だった。今回初めて有名シェフ、松久信幸が料理を提供するのも話題だ。また、新部門の追加で例年より多くのコメディアンが登場することで、授賞式がさらに楽しいものになることも期待できそうだ。ちなみに、今年の司会はフィリピン系アメリカ人のスタンダップ・コメディアン、ジョー・コイが務める。
 
 インターナショナルな投票者が増えたことが、受賞結果にどう反映されるのか。また、授賞式の4日後からアカデミー賞ノミネーションの投票が始まるので、アカデミー賞候補作の賞レースにどう影響するのか、またはしないのかも興味深いところだ。(吉川優子/Yuko Yoshikawa)

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