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吉岡秀隆「遠い存在だった」ゴジラとの共演『ゴジラ-1.0』で“寅さん”との縁実感

『ゴジラ-1.0』対ゴジラの要となる野田健治を演じた吉岡秀隆
『ゴジラ-1.0』対ゴジラの要となる野田健治を演じた吉岡秀隆 - (C)2023 TOHO CO., LTD.

 東宝実写ゴジラシリーズ最新作『ゴジラ-1.0』。『ゴジラ』70周年記念作品にして、日本におけるシリーズ30作目という節目の作品で、海軍工廠で兵器の開発に携わっていた過去を持つ人物・野田健治を演じた俳優の吉岡秀隆。日本映画界の巨匠と呼ばれる人たちと数多く作品を共にしている吉岡だが、『ゴジラ』シリーズに出演するのは初となる。本人は「ゴジラだけは遠い存在」と語っていたが、話を聞くと非常に不思議な縁でつながっていることが窺い知ることができる。

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山崎貴監督は「戦っていた」

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 壮大な『ゴジラ』70周年プロジェクト。吉岡の耳にも「企画が動いている」という話は「なんとなく」伝わっていたという。そんななか、長く作品を共にしてきた山崎貴監督からのオファーに、非常に感慨深い思いはあったものの、台本を読んで感じたのは「大変だな」という思いだった。

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 「まず本当に映像化できるのか、と思えるような台本でしたし、CGも『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』などの背景だけではなく、実際のゴジラが存在するわけで……。正直、想像がつかなかったので、慌てて(山崎監督が制作に参加した西武園ゆうえんちのアトラクション)「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」を体感してきました。施設を出た後、1時間ぐらい西武園のベンチに座って『これは倒せないな。どういうふうに演じればいいんだろう』とボーっとしていました」。

 吉岡が演じる野田は、ゴジラを倒すための作戦を考える、頭脳として巨大な敵に立ち向かう。そこには山崎監督の思いが色濃く出ているという。

 「野田のセリフに『戦争のことを思うと、眠れなくなる夜がある』というのがあるのですが、その一言で彼の人となりというのがわかったような気がしました。山崎監督の作品には、戦争を経験した人の抱える悲しみや苦しみが描かれることが多いのですが、その一言で野田という人物をイメージすることができました。一方で、野田は“学者”と(あだ名で)呼ばれているように、新しいもの、未知のモノへの好奇心が強い。初めてゴジラが熱線を吐いたあと、みんなは驚き慄くのですが、山崎監督から『野田はちょっと笑ってください』と本番前に言われたんです。そうやって、山崎監督はその都度、野田という人物にヒントを与えてくれる。キャラクターを一緒に作り上げてくださるんです」。

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 『ゴジラ』シリーズが70年という歴史を重ねてきた重みは、本作で主演を務めた神木隆之介の口からも語られていた。それはメガホンを取った山崎監督も同じだったようだ。

 「僕は山崎監督のデビュー作『ジュブナイル』から長くご一緒していますが、今回は相当大きなものを背負っているような感じが見てとれました。『ALWAYS 三丁目の夕日』や『海賊とよばれた男』などとはちょっと違う監督の横顔や後ろ姿だった気がします。きっと『ゴジラ』が大好きで、いままで本当に面白い『ゴジラ』作品を観てきた。どこかでそれを超えないといけないというプレッシャーもあったんでしょうね。普段おしゃべりしているときは、いつもの柔和な山崎監督なのですが、ふとしたとき、例えば『ヨーイ、スタート!』の掛け声だけでも違った。すごく戦っている感じがひしひしと伝わってきました」。

『男はつらいよ』と『ゴジラ』の存在

 日本映画のレジェンドたちと数多くの作品を共にしてきた吉岡。自身も日本映画界にはなくてはならない俳優として多くのクリエイターから愛されているが、『ゴジラ』シリーズへの参加は本作が初となった。

 「いろいろなすごい方とご一緒させていただきましたが、ゴジラは“ゴジラさま”というぐらい、何か別次元の存在でしたし(笑)、自分が参加することなんて考えたこともなかったんです」。

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 それでも、『ゴジラ』とは不思議な縁でつながっているということが、本作を通じて実感できたという。

 「僕は『男はつらいよ』にずっと出演させていただいていましたが、僕が演じた諏訪満男のおじいちゃんが志村喬さんなんですよね。志村さんは(1954年に公開された)初代『ゴジラ』で山根恭平博士を演じていたんです。僕が演じた野田は博士ではないですが、学者的な役割だったので、『男はつらいよ』の諏訪一族が『ゴジラ』で同じような立ち位置だったのが、不思議な縁だなと思っていたんです」。

 さらに吉岡は、初代『ゴジラ』を手掛けた本多猪四郎監督とも、黒澤明監督作『八月の狂詩曲』『まあだだよ』で作品を共にしていた縁がある。

 「本多先生は本当にすごいなと思うんです。あの時代にあれだけの作品を作って、後に続く多くのクリエイターたちに影響を与えた。いまの時代まで世界中で『ゴジラ』をモチーフにテーマを変えながら作品が作られているんですから。僕は本多先生のお人柄を存じ上げていますが、きっといまのこうした流れを喜んでいらっしゃると思うんです。『ゴジラ-1.0』もぜひ観ていただきたかったです」。

「ゴジラの咆哮」まで山崎組のこだわり!

こだわり抜いた鳴き声にも注目(C)2023 TOHO CO., LTD.

 本多監督が生み出した『ゴジラ』が、70年の歳月をかけて、さまざまな人がバトンをつなぎ、山崎監督が受け取った。とにかく圧倒的な“恐怖”として『ゴジラ』が存在する本作。吉岡自身も山崎組の徹底したこだわりに驚きを感じたという。

 「映像をご覧になった方は、ゴジラの咆哮の迫力に驚いたと思うのですが、音響の方に『あの音すごかったですね』と話したんです。そうしたら、ゴジラの声は千葉の(ZOZO)マリンスタジアムを借り切って、球場の真ん中で音を反響させて録ったと言うんですよ。要するに、周りに建物があるところでゴジラが出す音なので、しっかりと音が反響しなければいけない。都内でそこまでの音を録るのは無理だからといって、球場を借り切って録ったというんです。山崎監督の周りにはそこまでこだわる人たちがたくさんいる。すごいですよね」。

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 「日本が誇る世界の大スター」とゴジラを表現した吉岡。自身ではとても「近い存在とは思えない」と語っていたが、こうして作品に参加することになった。吉岡は「尊敬する志村喬さんと同じような立ち位置の役で『ゴジラ』作品に参加できたというのは、すごく不思議な縁ですね」と照れくさそうに語っていたが、それを実現してくれたのも山崎監督だという。「監督じゃなかったら、お呼びがかからなかった。いつも現場で明るく優しく、作品に対しては熱く。監督の人柄にみんなが引き寄せられる」。そんな山崎監督の渾身作。吉岡は「本当に素敵な作品に参加できて嬉しかったです」と清々しい表情で語っていた。(取材・文:磯部正和)

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