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『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』は何がスゴいのか?傑作と呼ばれる理由

歴代最高の『スパイダーマン』映画、今夜地上波初放送!
歴代最高の『スパイダーマン』映画、今夜地上波初放送! - (c) 2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: (c) & TM 2023 MA

 映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が今夜、金曜ロードショー(日本テレビ系)で地上波初放送される。パンデミックの最中であるにもかかわらず、記録的なヒットを遂げた本作は、批評家やファンから大絶賛を受け、「史上最高のスーパーヒーロー映画」という声まで聞かれた。そこまで人々を喜ばせた理由は何なのか。(以下、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレを含みます)(文/猿渡由紀)

【画像】スタイルが神!トム・ホランドの恋人ゼンデイヤ

 トム・ホランドが主演の『スパイダーマン』シリーズ3作目に当たる今作は、2作目『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』から直接続く内容だ。2作目の最後では、スパイダーマンの正体がミステリオによって世間に暴露されてしまった。しかも、スパイダーマンはヒーローではなく殺人者だとも言われてしまったのだ。ピーター・パーカーにとって、最大の危機。「さて、どうなるのか?」と続きを待っていた観客は一斉に映画館に駆けつけ、3作目は公開初週末に全世界で6億ドルを稼ぐことになった。これは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(12億ドル)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(6億4,000万ドル)に次いで、史上3番目の全世界デビューだ。12月公開作としても、またソニー・ピクチャーズの歴史においても、過去最高である。

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 観た人たちの満足度も高かった。シネマスコア社の感想調査の結果は「A+」。めったに出ることのない最高成績だ。それも納得。スリルたっぷりのストーリー、歴代シリーズから懐かしの悪役の再登場、息を呑むアクション、感動的で切ないラストと、どこを見てもこの映画はエンタメとしてとびきり優れているのである。

 だが、何よりもファンを喜ばせたのが、歴代スパイダーマン(トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールド)のサプライズ出演であることは、間違いない。筆者はアメリカでの公開後に映画館で見たが、彼らが登場した瞬間には場内で「ええっ」という驚きの声が上がったのを覚えている(筆者も同様に声を上げてしまった)。この秘密は厳重に守られてきて、誰も知らなかったのである。映画を先に観た人々も、これから観る人たちのためにそれを守り通したのは、感心すべきだ。

歴代スパイダーマン集結は世界中のファンを熱狂させた - (c) 2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: (c) & TM 2023 MA

 しかも、ファンサービス目的のカメオ出演ではない。それぞれのスパイダーマンにちゃんとストーリーがあり、見せ場があるのである。そこがまたすごい。また、これは『スパイダーマン』映画の歴史を逆手に取った、非常に賢いものでもある。

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 2008年の『アイアンマン』でマーベル・スタジオがデビューする前、マーベルは、自分たちで映画を作るのではなく、ライセンス契約をして他社に作品を作らせていた。『スパイダーマン』の映画化権はソニー・ピクチャーズが獲得し、2002年から2007年にかけてマグワイア主演、サム・ライミ監督で最初の3本を作り、大成功させる。

 次にソニーは、ガーフィールドを新たな主役に抜てきして、2012年の『アメイジング・スパイダーマン』でリブート。ヒロインがマグワイア版でキルステン・ダンストが演じたメリー・ジェーンではなく、エマ・ストーン演じるグウェン・ステイシーに変わったりはしたものの、ピーター・パーカーがどうやってスパイダーマンになるのかなど、基本的な話は同じだった。このシリーズも3部作の予定で、2作目『アメイジング・スパイダーマン2』の最後にはグウェンが死ぬという驚きの展開があり、3作目にはシェイリーン・ウッドリーがメリー・ジェーン役で出演することも決まっていた(正確にいうと、ウッドリーのメリー・ジェーンは2作目に登場することになっていたのだが、2作目が盛り込みすぎになったため、3作目に延期された)。

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 しかし、2作目の成績が、悪くはないものの1作目より劣ったこともあり、3作目の企画は進まず、そのまま流れることに。そんな中、マーベルは勢いを増す一方ながら、スパイダーマンを出すことができないジレンマを抱えていた。そこで今度はソニーとマーベルが協力し、ホランド主演で新たにスパイダーマン映画を作ろうということになったのである。その第一弾が『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)だ。

トビー、アンドリュー、トムホが揃った奇跡の映画 - (c) 2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. MARVEL and all related character names: (c) & TM 2023 MA

 そんなふうに、観客は、15年の間に3人のピーター・パーカーを見てきたわけだが、『ノー・ウェイ・ホーム』は、その歴史を踏まえ、それぞれの三部作に存在意義があったことを示してみせたのである。マグワイア版やガーフィールド版を愛してきた人たちは、そこにさらなる感動を覚えたのだ。今年6月に公開されたDC映画『ザ・フラッシュ』も似たようなことが出てくるが、あまり当たらなかったのは、そういう深い部分の満足度が違ったというのもあるのではないか。

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 そんな大傑作『ノー・ウェイ・ホーム』は、作られないまま終わる可能性もあった。ホランド版で手を組むに当たり、マーベルは収益の5%を受け取ることで合意していたのだが、2作目の後、今後は半分出資する代わりに収益も半分もらいたいと要求し、ソニーは拒否。それを受け、マーベルは、このプロジェクトから手を引くと決めたのである。となると、ホランドの『スパイダーマン』は、あの中途半端な形で終わることになってしまう。そんなことがあっていいのか。

 だが、ホランドが自らディズニーとソニーのトップを説得したおかげで、2社は話し合いを再開。幸い、そこで合意が得られ、この3作目が実現することになった。そういう背景を考えると、『ノー・ウェイ・ホーム』から受ける感慨は、さらに深まるというものだ。多くの作り手とファンの思いが最も良い形で結集したのが、この映画。その良さを、今晩、あらためて堪能してほしい。

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