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裸で15か月の“監禁”懸賞生活、知らぬ間に放送…なすびの壮絶な実話にショックを受けたトロントの観客たち

第48回トロント国際映画祭

映画『ザ・コンテスタント(原題)』より
映画『ザ・コンテスタント(原題)』より - Courtesy of TIFF

 バラエティ番組「進ぬ!電波少年」の企画「電波少年的懸賞生活」で人気を博したなすびを題材にしたイギリス製作のドキュメンタリー映画『ザ・コンテスタント(原題) / The Contestant』が現地時間8日、第48回トロント国際映画祭でワールドプレミア上映された。“事実は小説より奇なり”を地で行くなすびの物語にトロントの観客はショックを受けた様子で、上映後のQ&Aでは多くの人々が自らの思いや疑問を表明した。

裸で踊るなすび…『ザ・コンテスタント(原題)』フォトギャラリー

 「電波少年的懸賞生活」は、「人は懸賞だけで生活していけるか」をテーマした1998年の企画だ。若手芸人だったなすびはオーディション参加し、その中から無作為に選ばれるとそのまま目隠しされて小さなアパートの部屋へ連れて行かれ、服まで取り上げられて全裸でチャレンジスタート。部屋から出られるのは、当選総額100万円に達した時のみ。少しずつ正気を失い、時に飢えるほど追い込まれながらも、15か月にわたって“監禁”懸賞生活を行った。なすびはその模様が全国放送されて有名人になっていたことも、懸賞生活で書いた日記がベストセラーになっていたことも知らなかった。

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 実際に外から鍵を掛けられていたわけではなかったが、当時の彼は若手芸人という弱い立ち立場。さらに番組プロデューサー・土屋敏男の“追い詰められていた方が面白いものが撮れる”という考えの下、スタッフとの接触まで制限されて誰とも話せず、とても普通の精神状態ではなかったなすびは、「部屋を出た方が悪いことが起こる」と考えるようになっていた。

 そうして自殺を考えるほどに追い込まれていくなすびの姿に、上映後には「観るのがきつい映画。泣いてしまった」「家族、視聴者、何らかの機関など、誰か止める人はいなかったのか?」と反響が続々。別のバラエティ番組に出た際にメジャーで顔の長さを計られるなど、芸名の由来である外見いじりが続くことにショックを受けた人もいた。一方、このドキュメンタリー映画は、なすびがこの15か月で幸か不幸か人と人との結びつきの大切さを誰よりも深く理解するようになり、それが地元・福島の復興支援を続け、困っている人を見れば助けずにはいられない現在のなすびを形作った面があることも伝えている。

 監督を務めたクレア・ティトリーは、トロント入りがかなわなかったそんななすびの手紙を代読。「人々がどうこの映画を受け取るのか、不安と期待が入り交じった複雑な心境です。こういう映画は、主人公が死んだ後に作られるものだと思いますが、幸運なことに、僕は生きていて元気にやっています」との言葉には笑いが。「多くの人々は、僕のことを悲劇に見舞われた不幸でかわいそうな人間だと考えるかもしれません。でも僕は決して、不幸な人間ではありません。なぜなら僕には信頼できる、ちょっとした幸せを共有できる友達がいて、そうした幸せによって僕は元気に笑顔で生きていけるのです。この映画を観た人々が、少しでも豊かな人生を送るために何が重要かを考えてくれることを願っています」と締めくくられたなすびからの手紙に、観客は拍手を贈っていた。(編集部・市川遥)

第48回トロント国際映画祭は現地時間9月17日まで開催

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