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沖縄戦の悲惨さ伝えるドキュメンタリーが満席

左から、尾上政幸音楽監督、河邑厚徳監督、新垣成世、佐喜眞道夫館長。
左から、尾上政幸音楽監督、河邑厚徳監督、新垣成世、佐喜眞道夫館長。

 沖縄県で開催中の「島ぜんぶでおーきな祭 第15回沖縄国際映画祭」で15日、ドキュメンタリー映画『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』の上映が行われ、舞台あいさつに監督の河邑厚徳、佐喜真美術館館長の佐喜眞道夫、音楽監督の尾上政幸、民謡歌手の新垣成世らが登壇。この日がワールドプレミア上映となった同作は、会場を埋め尽くした満席の観客から大きな拍手が送られた。

【画像】沖縄戦の悲惨さ伝えるドキュメンタリーの舞台あいさつ

 本作は、河邑監督が2020年から約3年かけて製作したドキュメンタリー。“原爆の図”で知られる丸木位里、俊夫妻が描いた縦4メートル横8.5メートルの大作「沖縄戦の図」を、制作当時の貴重な映像や、多くの証言者の言葉とともにつむぐ。舞台あいさつ後の取材で「絵の力だけで戦争の本質を伝えられるんじゃないかと思い、沖縄戦の図をテーマに描いていこうと思った」と話した河邑監督。その言葉通り、「ひめゆりの塔」や「チビチリガマ」、久米島での在日韓国朝鮮人の住民虐殺など、人が人を殺し、自らが命を絶つことを強いられた人々の苦悶に満ちた表情がで描かれた作品からは、戦争の愚かさや当時の軍隊の愚行、「ヌチドゥタカラ 命こそ宝」という想いが伝わってくる。

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 1994年、米軍の普天間基地にとられていた先祖代々の土地を取り戻して建設し、「沖縄戦の図」を展示してきた佐喜眞美術館の佐喜真道夫館長は、「ずっとみ続けてきた絵なのに、今日スクリーンで観たとき、初めてこの絵を見た気持ちになった」とコメント。いま、沖縄戦については、2024年度からの教科書検定に合格した3社3冊の「沖縄戦」の記述で、集団自決(強制集団死)について旧日本軍から住民への命令(軍命)などの関与があったことを示す説明記述がなかったことが話題になっている。佐喜真館長は「丸木夫妻は原爆の図を持って世界中に行き、いろんな意見を言われました。だからこそ、戦争について、考え抜いた人たちです。この絵には、子供や女性、老人が中心に描かれているんです。殺された人間の立場から見ないと戦争の本質というのは見えてこない。世の中のごまかしは、この絵の前には一切通用しない」と訴えた。

 沖縄の文化と歴史を語り継いできた新垣は、舞台あいさつで仲栄真ウシ作詞の民謡「戦場を恨む母」を歌った。「若い人たちから年配の方達まで幅広い年齢層の人たちがきてくださって、沖縄に興味を持ってくれてすごくうれしかった」と話した新垣は、「若い世代に向けて、沖縄で起きた事実をきちんと嘘をつかずに伝えていきたい」と真剣な表情で想いを語った。(取材・文:森田真帆)

「島ぜんぶでおーきな祭-第15回沖縄国際映画祭-」は4月16日まで沖縄県内の各会場で開催中
ドキュメンタリー映画『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』は6月17日より桜坂劇場にて沖縄先行上映

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