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『小さなバイキング ビッケ』伊藤沙莉 単独インタビュー

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『小さなバイキング ビッケ』伊藤沙莉 単独インタビュー

男の子を演じてみたかった!

取材・文:浅見祥子 写真:映美

70年代に人気を博したテレビアニメ「小さなバイキング ビッケ」の原作となった児童文学シリーズが、映画『SING/シング』『ペット』のスタッフにより新たに劇場アニメとして完成した。身体は小さいけれど知恵と勇気でピンチを乗り越えていくビッケが主人公の冒険ファンタジー。その声を、映画『ペット2』、テレビアニメ「映像研には手を出すな!」で声優としても評価の高い伊藤沙莉が担当している。個性的なハスキーボイスが印象的な伊藤が自分の声について、そしてブレイクを果たした現在の心境について語った。

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「お母さんに観てもらいたい」が最後の一押し

伊藤沙莉

Q:小さなバイキング ビッケ』で声優のオファーが来たときの感想は?

最初は緊張というか不安というか、「私でいいのかな?」という思いが強かったです。いままで声のお仕事をやらせていただいた作品を判断材料にしてお声掛けいただいたと思うのですが、だとしたらなおさら、それを超えられるの? 期待に応えられる? という不安がありました。そんなことを考えているときに母に聞くと、70年代のテレビアニメをリアルタイムで観ていた、まさにドンピシャの世代で、興奮して喜びまして。ビッケ役をがんばったところをお母さんに観てもらいたいなというのが、最後の一押しになりました。同時に、「ビッケを大切に演じて」とも言われ、絶対にこの作品を汚してくれるなよ! という気持ちを受けて、がんばろうと思ったんです。

Q:ご自身の声に関しては、武器だと思ったり自信を失ったり、紆余曲折があったそうですね。

26年の人生で17年このお仕事をさせていただいていて、その間、この声は武器だ! と思えたときも、なんのメリットもない……と思った時期もあります。上がったり下がったりでしたが、最近になって安定してきたのかもしれません。今回もお芝居を観てくださって、作品に声しか載らない役回りで起用していただけたわけです。すると、初めて声のお仕事をやらせていただいた『ペット2』、そして「映像研には手を出すな!」はあれでよかったんだ、私の声でいいんだ! と思えて。経験を踏まえて少~しずつ自信がついた感じですね。

男の子を演じて戦ってみたかった

伊藤沙莉

Q:ビッケ役は、すぐイメージできましたか?

男の子を演じてみたかったので、そこはノリノリで意識しました。家で練習もしましたが、声が低いだけではダメなんですよ。「君がいまやってるのは青年だね。少年をやってほしい」と言われ、ハキハキしたテンポや声の張りを意識し、あとはアフレコ現場で微調整していただきました。

Q:「は!」とか「ふぅ」と、セリフ以外の声の出し方も工夫されていましたね。

声のお仕事で一番好きなのがそこなんです。そうした声がセリフとして台本に書かれているわけではないので、目の前の映像で繰り広げられるビッケの身体の動きや心情に合わせ、思った通りにやっていい。自由で縛りがないから楽しいんです。でも「ひー」「はー」「ほー」「らー!」とバリエーションがあればいいわけでもないので(笑)。例えば「ここだけはリアルに」と塩梅に気を付けて。つんのめったときには、「んああ!」という声を入れたら面白いかな? と考えたりしました。

Q:吹き替えで楽しかったシーンは?

男の子がやりたいと思ったのは結局、戦いたかったんですよね。悪役のようなキャラと、なんだお前! って言い合うシーンでは、「うぉ~!」という気分になりました(笑)。

子供と大人で違う楽しみ方ができる

伊藤沙莉

Q:自分の声が入った本編をご覧になりましたか?

観ましたが……いや~、まだなんとも言えません。これまで声のお仕事をやらせていただいた作品は全てそうで、最初はどうしても自分の声に聞こえてしまう。慣れるように何回か観ます。それでまあ、う~ん、男の子には聞こえないことも……ないんじゃないか、どうかしら? みたいな感じです(笑)。

Q:作品全体としての感想は?

「子供から大人まで幅広く楽しめる作品」とよく言いますが、これは本当にそう。仲間の大切さなど、子供たちがこれから知っていくこと、知っていかなきゃいけないものがたくさんつまっています。そして大人が観たときには夢をただの夢とは思わない、なりたいものになる! という将来を信じる純粋な気持ちを取り戻して、またなにかに再び熱くなれるかもしれません。子供の頃に観たアニメを思い出して懐かしいと感じるかもしれないですし、いろいろな楽しみ方があるなと思いました。シンプルに楽しめるけど、単純じゃない。子供たちが年齢を重ねてから見返したら、また違う楽しみ方ができると思います。

役者なら全ての夢が叶えられる!

伊藤沙莉

Q:ご自身は子役から活動してきて、俳優という夢が揺らいだことはなかったのですか?

あ、全然ありました(笑)。「警察官になりたい」「今度はお花屋さんに」と将来の夢がコロコロ変わる人間だったんです。それで最終的に、全部になれるのは……役者だなと。それってお得! という感じでした(笑)。

Q:子役時代に出演されたドラマ「女王の教室」を見返しても、一瞬で伊藤さんとわかりました。

ずっとこの声で、基本は変わってないんですよね。たまに、「酒やけですか……?」と思われるので(笑)。そういう方には「ぜひ『女王の教室』を観て下さい」と薦めています。当時11歳でしたが、同じ声だから! と。小さい頃を知っていただけるのは本当にありがたいです。

Q:ドラマ「ペンション・恋は桃色」では番組の最後にフリートークのようなコーナーがありました。そんなふうにフィクションとノンフィクションの境目があいまいな作品が印象的です。

なにが起こるかわからないというのが一番嫌いで一番好きです。がちがちに決まったお芝居も好きですが、そこに変化球がくるのは怖い。もともと、自分からアドリブを投げるタイプではないんです。逆に思われているようで、「アドリブはお好きにやっちゃってください」と言われたりしますが、「えっ無理……」と。基本的には、投げられたものに反応するのが好きです。「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」もそうですが、よ~く見返すと、私から発信していることはほとんどない。私がしているのはリアクションなんです。自分から動くのは、お芝居以外でも苦手です。受け止め、受け入れることはできるんですけど。

Q:どんな女優になるのが夢ですか?

ポスターや予告編に“伊藤沙莉”の名前が出て、それを見た方に、「じゃあ観てみよう」と思っていただけるような、作品に触れるきっかけになれる人になりたいです。

Q:伊藤さんが演じるとどんな役も、その人がまとうはずの生活感が漂い、地に足のついた存在に見えます。その辺りは意識されていますか?

20歳のときに「GTO」というドラマで飯塚健監督と出会い、以後6~7作ご一緒させていただいています。その飯塚監督に「2Dで人間を描かないでほしい」と言われ、その言葉が好きで実践していきたいと思っています。そのときはイジメっ子の役でしたが、「イジメっ子にも泣く夜はある」と言われ。そう考えると、この役はこういう人と決めつけない。そんなことをいつも考えながら演じていますね。


伊藤沙莉

その日は朝から取材が続き、インタビューできたのは夕方になってから。なのに最初から最後まで、とっても元気! あのハスキーボイスで楽しい話をつぎつぎと語り、ときに自身の笑いのツボにハマってひとしきり笑ってしまい、「動画は編集できますか?」と心配顔で聞いていた伊藤沙莉。このサービス精神と謙虚な態度、素早いリアクションを目の当たりにして、ここ数年のブレイクはまだまだ序の口、と実感した。

(C) 2019 Studio 100 Animation - Studio 100 Media GmbH - Belvision

映画『小さなバイキング ビッケ』は10月2日より全国公開

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