ミルクマン斉藤

ミルクマン斉藤

略歴: 映画評論家。1963年京都生まれ。デザイン集団「groovisions」の、唯一デザインしないメンバー。現在、京都・東洞院蛸薬師下ルの「三三屋」でほぼ月イチ・トークライヴ「ミルクマン斉藤のすごい映画めんどくさい映画」を開催中。雑誌「テレビブロス」「ミーツ・リージョナル」「キネマ旬報」等で映画コラムを連載中。

ミルクマン斉藤 さんの映画短評

« Prev 全536件中11~15件を表示しています。 Next »
  • アントニオ猪木をさがして
    誰も見つけられない猪木という巨人の存在。
    ★★★★★

    全ての猪木信者は、死してなお彼という存在がなんだったのかを探っている。そこに関していささか隔靴掻痒の感はある。まず彼の現役時代の試合がほとんどないのが痛い。三原光尋によるドラマシーンなどまったくもって不要である。新日の後輩に関してもオカダ・カズチカなど本人とほとんど喋ったことのない人物にインタビューする時間があればもっと話を聞くべき人がいるではないか。ただ、猪木の写真を撮り続けたは写真家・原悦生であるとか、後輩ではあっても道場から自ら外させた猪木のパネルを戻すことにする棚橋弘至であるとか、マサ斎藤との巌流島戦を講談としてやってのける神田伯山とか感慨深い箇所は多数あるのだが。

  • キリエのうた
    「憐れみの賛歌」という名を持つ女性に幸あれ。
    ★★★★★

    岩井俊二という作家の様々なエッセンスが詰まった作品だ。カリスマ的な歌手という点では『リリィ・シュシュのすべて』を想起させるが、あれほど凶悪ではなく、『花とアリス』や『リップ・ヴァン・ウィンクルの花嫁』に近いシスターフッドな関係が強く感じられる優しき映画。とりわけアイナ・ジ・エンドの存在感がまったくもって素晴らしい。彼女は行定勲の短編作品などでも女優の資質を見せていたが、ここからもっと成長するのではないか。さらに広瀬すずが今までとは一風変わったキャラを演じていて、これもまた良い相乗効果を招いている。それと共に3.11に関して多大な発信を続けてきた岩井の一つの解答でもあるのを忘れてはならない。

  • 唄う六人の女
    思いっきり観るものを惑わせ狂わせてくれます。
    ★★★★★

    これぞ石橋義正ワールドと言うべき作品だ。タイトルに反してまったく歌わない、しかも喋りもしない六人の変な女(とりわけ、水川あさみの佇まいが絶品)のコミューンに巻き込まれてしまう二人の男の物語。テイストとしては『狂わせたいの』に近い感じかも。森の中という一種現実離れした空間を生かし、爬虫類や昆虫などのアイテムを多用しつつ、何ともミステリアスかつ不条理な世界をこれぞとばかりに繰り広げている。前作『ミロクローゼ』に続く山田孝之、別に可笑しい演技はしないのにどこかユーモラスな竹野内豊が、いわば女難の渦に巻き込まれるのだから。ここまで徹底的にリアリズムを排除した映画が日本映画界に存在し得るとは稀にして稀。

  • 春画先生
    心のリミッターを外される/外すことの快感。
    ★★★★★

    正直、これほど変態的でエロティックな純愛映画は稀である。『月光の囁き』を実質的デビュー作とする塩田監督作品の世界観が成熟した形で戻ってきた感。春画にのめり込む先生と、弟子同然となる女性との話なのだが、その台詞一つ一つに日本的エロの考察がちりばめられているのに大納得。例えば「歌麿はひたすら女とまぐわい続けて春画を描いた。北斎はまぐわう時間を惜しんで春画を描いた」等々。言ってみればこの二人の関係は歪んだ関係でNTR(寝取られ)のマゾヒスティックなところに繋がるのであるが、そこに永遠のロリータたる安達祐実が絡んでくるところも面白いところ。しかも全てが笑い絵へのシンパシーと愛情に溢れているのだ。

  • クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド
    ジェフ・ブリッジスがナレーション、っていかにも。
    ★★★★★

    最初にお断りするが僕はCCRにほぼ関心がない。以前ベスト盤みたいなのを聴いて「ただのブルース・ロックじゃないか」と思ってから余計にだが(「プラウド・メアリー」「ミッドナイト・スペシャル」といった超有名曲はとりあえずとして)。これは本国アメリカで頂点を迎えた’69年の翌年、イギリスのロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ映像をリマスターしたものだが、字幕付きで聴くと、初期の「俺、南部の黒人音楽大好きなんだよぉ(行ったことはないけど)」から、時の政治にアプローチする骨太さを獲得していったことにも気づく(コメントはやたらお利口さんぽくないが)。ま、そういう興味で過去の音楽を知るのも悪くないでしょ?

« Prev 全536件中11~15件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク