平沢 薫

平沢 薫

略歴: 映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「Movie Walker」「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況: 「トゥルー・ディテクティブ」シリーズ第4弾、ジョディ・フォスター出演の「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」@U-NEXTを視聴中。夜が続くアラスカの町。先住民たちの間の言い伝え。超常現象のように見える事件。これまでのシリーズとはまったく違う雰囲気が新鮮。

平沢 薫 さんの映画短評

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  • リンダはチキンがたべたい!
    輪郭のない"色彩"で描かれる世界が楽しい
    ★★★★★

     色彩を愉しむアニメーション映画。ストーリーはあり、リンダとその母親が、ストライキで食肉店が休業中の状況下で、チキン料理を作ろうと試行錯誤する物語だが、それは街や田舎、さまざまな人々を登場させるための設定。人物や風景の表現に"線"は使われるが、輪郭はなく、色彩が自在に変化する。それでいて人物たちの行動も感情も鮮やか。

     そういう表現なので、リンダのアパートで暮らす人々の人種の多様性は、名前から推測されるが、形や色彩からは分からない。また、ミュージカル風に挿入歌があり、曲調によって映像のデザインのタッチが変わるのも楽しい。監督コンビは幼い娘のために製作したとのことで、幼児が見ても楽しめそうだ。

  • プリシラ
    14歳の女の子の気持ちをポップソングと共に描く
    ★★★★★

     同じソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』で急にザ・ストロークスの「What Ever Happened」が流れた瞬間を思い出させる。あの映画でも18世紀のフランス王妃の物語に現代のポップソングが使われたが、本作も同様。プレスリーの妻プリシラの視点から見た物語を描くが、彼女の心情は、プレスリーの音楽ではなく、当時の音楽でもなく、それにピッタリのさまざまな時代のポップソングと共に描かれる。音楽監修は手練のランドール・ポスターだ。 
     14歳の女の子が、ポップスターの恋人になって体験する、夢のような至福感。しかし、そこに浸り続けることは出来ない。相手は特殊だが、普遍的な物語でもある。

  • インフィニティ・プール
    人々が被る"仮面"の造形が目を奪う
    ★★★★★

     これまでも人間の"身体性"を追求してきたブランドン・クローネンバーグ監督が、それをさらに推し進め、自分のクローンを製造し、自分の代わりに処罰を受けさせる世界を描く。自分を見失っていく主人公をアレキサンダー・スカルスガルドが熱演、彼を翻弄する女性役のミア・ゴスの演技が強烈だ。

     しかし、何よりも目を奪うのは、クローン製造が習慣となった人々が悪事を働く時に被る”仮面”の、人間の顔を異様に歪ませたような造形と、まるで人肉と人皮で造られているかのような質感。彼らが、自分の顔の上に、さらに変形した人間の顔のようなものを被りたくなるところに、この映画の真のテーマが潜んでいるのかもしれない。

  • ゴーストバスターズ/フローズン・サマー
    ドラマもキャラもたっぷり山盛り
    ★★★★★

     あれもこれもを大量投入。ストーリーは、地球に氷河期をもたらす力を持つゴーストとの対決に、事情があって孤立する末っ子フィービーとゴーストの少女の交流、元教師ゲイリーと一家の微妙な関係のドラマも。登場人物も、前作のポッドキャストやラッキーも再び登場、旧ゴーストバスターズの面々が勢揃するうえに市長まで。さらにおなじみの人気ゴーストたちも再登場する山盛りぶりだ。

     中でももっとも増量されたのは、ギャグと笑いの量だろう。舞台を旧作2作のニューヨークに戻すだけでなく、旧2作のどこかとぼけた雰囲気に挑戦。お笑いパートには、クメイル・ナンジアニとパットン・オズワルト演じる新キャラもプラスされている。

  • ブルックリンでオペラを
    幸せになってほしい人たちがみな幸せになる
    ★★★★★

     オペラを依頼されているのにスランプ中で何も浮かばない作曲家の夫、その妻の潔癖症すぎる精神科医、その夫が出会う恋愛依存症の小型輸送船の女性船長。登場人物がみなタイプの違う問題を抱えていて、その問題が治るわけではないのに、話がどんどんエスカレートしてとんでもない方向に向かうので笑ってしまい、最後には、幸せになってほしい人たちがみな幸せになって気持ちいい。

     予想外の出来事が奇跡的な事態を生み出してしまうというストーリーに「オペラ」というモチーフが似合い、真剣なオペラの舞台が爆笑のネタになるのも痛快。タイトル通り、湾岸地区から高級住宅街まで、ブルックリンの様々な風景も魅力的。

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