猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

« Prev 全707件中6~10件を表示しています。 Next »
  • グレート・スクープ
    相手が国の要人でも真実と正義のために鋭く迫る
    ★★★★

    金と権力を持つお友達に未成年の女性たちを斡旋した罪で逮捕され、獄中で自殺(ということになっている)したジェフリー・エプスタインについて知識と関心があった人はもちろん、なかった人にもおすすめ。実際のインタビューをほぼ再現する最後の数十分は、とりわけ目が離せない。あんなボロボロのインタビューをしながら、「うまくいった」と感じたアンドリュー王子は、なんと情けなく、ズレているのかと苦笑してしまう。相手が国の要人であっても、被害者女性のために、正義のために、鋭い質問をして真実を暴こうとするプロデューサーとインタビュアーの姿に、ジャーナリズム、メディアはこうあるべきなのだとあらためて感じる。

  • アイアンクロー
    暗く、重い話だが、最後には奇妙にも希望を感じる
    ★★★★

    信じられない本当の話。近年時々言われる「有害な男らしさ」に警鐘を鳴らす話でもある。映画には出てこないが、実はもうひとり弟がいたというのだから驚き。悲劇が次々に起き、心が沈んでいくが、最後にはそれらのことを乗り越えた主人公の強さに感動し、不思議に希望が湧く。肉体改造と特訓でレスラーになりきった主要キャストには大拍手。ザック・エフロンが試合をするシーンも、ノーカットで撮影したとのこと。感情的な演技の面においても、エフロンのキャリアで最高と言っていい。タイプはまるで違うが、ダーキンの「不都合な理想の夫婦」も夫の野望のために家族が転げ落ちていく話で、今作となんとなくつながるものがある。

  • パスト ライブス/再会
    極めてパーソナルながら誰もが共感できる
    ★★★★

    セリーヌ・ソン監督自身の体験にもとづく究極にパーソナルな物語。だが、奇妙なことに、誰もが共感できるのだ。筆者の場合は、生まれ育った国と今生きる国、どちらも自分のアイデンティティで、どちらかが欠ければ自分ではないのだというところが、とりわけぐっときた。好き同士なのに人生のタイミングが合わなくて結ばれなかったという体験をした人も、きっと自分に重ねて泣けるはず。ソン監督が最初から決めていたというエンディングも、リアリティがあり、感動させる。この映画が世界でスマッシュヒットし、オスカーに候補入りするほど評価されたという事実にも、どこにいても人は似たような経験をするのだなと、ちょっとほんわか。

  • ブルックリンでオペラを
    ストーリーもキャラクターも良い意味でオペラチック
    ★★★★★

    お決まりのパターンにはまらない、ユニークなロマンチックコメディ。ストーリーやキャラクターにやや極端なところがあるのも、オペラがメタファーになっていると思えば納得。登場するのはふた組の全然違う中年カップルと、彼らのティーンエイジャーの子供たち。どちらも妻の連れ子であるという微妙なディテールも、この物語をモダンにする。どんどんごちゃごちゃになっていく状況を、豪華キャストで、明るいトーンを保ちつつ描くのは、ちょっとウディ・アレンを思い出させたりも。映画に出てくるオペラのプロダクションも見事。エンドクレジットでかかるブルース・スプリングスティーンによるテーマソングも良い。

  • ビューティフル・ゲーム
    優しい視点で語られる、素直に良い映画
    ★★★★★

    多くの実話にインスピレーションを得て生まれた感動作。ホームレスの問題が世界各地でますます論議される中、それらの人々に思いやりを持って寄り添う。アンダードッグのスポーツ映画はほかにもあるが、お決まりのパターンにはまってしまうのをうまく避けた。今作にたっぷりハートを与えるのは、いつものことながらすばらしいビル・ナイ。「エンパイア・オブ・ライト」でブレイクしたマイケル・ウォードも光る。過去にホームレス・ワールドカップに出場した選手が小さな役で登場するのもナイス。同じ題材を扱う2008年のドキュメンタリー映画でナレーションと製作総指揮を務めたコリン・ファレルもプロデューサーに名を連ねている。

« Prev 全707件中6~10件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク