猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • ブルックリンでオペラを
    ストーリーもキャラクターも良い意味でオペラチック
    ★★★★★

    お決まりのパターンにはまらない、ユニークなロマンチックコメディ。ストーリーやキャラクターにやや極端なところがあるのも、オペラがメタファーになっていると思えば納得。登場するのはふた組の全然違う中年カップルと、彼らのティーンエイジャーの子供たち。どちらも妻の連れ子であるという微妙なディテールも、この物語をモダンにする。どんどんごちゃごちゃになっていく状況を、豪華キャストで、明るいトーンを保ちつつ描くのは、ちょっとウディ・アレンを思い出させたりも。映画に出てくるオペラのプロダクションも見事。エンドクレジットでかかるブルース・スプリングスティーンによるテーマソングも良い。

  • ビューティフル・ゲーム
    優しい視点で語られる、素直に良い映画
    ★★★★★

    多くの実話にインスピレーションを得て生まれた感動作。ホームレスの問題が世界各地でますます論議される中、それらの人々に思いやりを持って寄り添う。アンダードッグのスポーツ映画はほかにもあるが、お決まりのパターンにはまってしまうのをうまく避けた。今作にたっぷりハートを与えるのは、いつものことながらすばらしいビル・ナイ。「エンパイア・オブ・ライト」でブレイクしたマイケル・ウォードも光る。過去にホームレス・ワールドカップに出場した選手が小さな役で登場するのもナイス。同じ題材を扱う2008年のドキュメンタリー映画でナレーションと製作総指揮を務めたコリン・ファレルもプロデューサーに名を連ねている。

  • ラブリセット 30日後、離婚します
    魅力的なキャストが笑いをたっぷりと提供
    ★★★★★

    まずは、キャスティングが大成功。みんなが魅力的であるだけでなく、お互いとの相性もばっちり。また、主演のふたりはもちろん、「この人、いる意味あるの?」と思っていた脇役にも実はちゃんと見せ場があったりする。すべての役者が笑いを提供するが、とりわけカン・ハヌルはすばらしい。恐れることなくおバカな領域に全力で突入するのだ。映画自体にもユーモアはたっぷり。“記憶喪失”という古いメロドラマ的なプロットももちろん意図的だし、クライマックスもあえて恋愛映画の定番パターンを用意しつつ、わかってやっているんだよと見せる。韓国で大ヒットしたというのも納得の、楽しめるロマンチックコメディ。

  • シャーリー・チザム
    歴史上偉大な人物の特定の時期に焦点を当てる
    ★★★★

    黒人女性として初めて大統領を目指したシャーリー・チザムの話が、大統領選を控える今配信されるのは、完璧なタイミング。彼女の掲げる理想、スピーチはとてもパワフルながら、その夢をかなえる道のりは複雑だった。その歯痒さは今も同じで、非常に共感できる。52年も前の時代、そんな彼女を支えた夫や家族にとってはどんな体験だったのかが語られるのも興味深い。選挙戦に焦点を当てるため、ある意味政治スリラー的になり、彼女が一生の間に達成した功績があまりわからないことへの不満も聞かれるものの、それはまた別の映画がやってくれることを期待。昨年惜しくも亡くなったランス・レディックも抜群の存在感を見せる。

  • ナチ刑法175条
    知られざる歴史を生存者の肉声で語る貴重な映画
    ★★★★

    ナチ支配下のあまり知られてこなかった現実に焦点を当てる優れたドキュメンタリー。昨年日本公開された「大いなる自由」もパワフルだったが、今作は、実際に体験した人々の肉声で、その残酷な状況を語る。この映画の撮影時、同性愛者の強制収容所の生存者で、まだ生きている人は、10人もいなかった。そのうち7人から話を聞き、このような形で記録に残せたのは非常に貴重。それらの中には素敵なロマンスや当時のゲイ&レズビアン文化についての楽しい思い出もあれば、聞いていて胸が張り裂けそうな辛い話もある。2000年のサンダンス映画祭でプレミアされたこの映画を日本の劇場で見られる機会ができたのは、すばらしいことだ。

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