シネマトゥデイ

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中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。日本映画navi、全国商工新聞、スカイパーフェクトTV(ぴあ)、BANGER!、朝日新聞webサイトおしごとはくぶつかん情報館内で「おしごと映画」を執筆中。いつの間にやら映画祭を回るのがライフワークとなっている。お気に入りはオランダ・ロッテルダム国際映画祭とスペインのサンセバスチャン国際映画祭。

近況: 本サイトで「映画で何ができるのか?」と「ぐるっと!世界の映画祭」を連載中。また、編集に携わった塚本晋也監督・著「『野火』全記録」(洋泉社)、DVDマガジン「石原裕次郎シアター」(朝日新聞社)が発売中デス。ライフワークの旅の記録をまとめたブログはこちら。https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

サイト: https://www.oshihaku.jp/series/00007

中山 治美 さんの映画短評

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  • 羊飼いと風船
    高尚な香りに惑わされ、敬遠していたら損をする
    ★★★★

    タイトルの”風船”はダブル・ミーニング有だし、チラシなどに使用されている写真もよく見ると……(苦笑)。冒頭から爆笑必至の”明るい家族計画”物語。だがチベットだけに厄介だ。夫の欲望は止まらないが、これ以上の出産は家計を苦しめ、政府による人口抑制制度にも触れる。一方で輪廻転生という信仰の問題も絡んでくる。そんな中で母ドルカルが、一人の女性として自分の生き方について自問するようになる。つまりは世界の潮流であるジェンダー論がテーマ。古い価値観が根強く残るアジアで気鋭監督たちは自国の文化と向き合いながら果敢にそのテーマに斬り込み、我々に大きな課題をぶつけてくるのだ。世界が注目する逸材の策士ぶりを見たり。

  • レンブラントは誰の手に
    罪な男よ、レンブラント
    ★★★★★

    『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を制作し、美術界に入り込んだ監督だからこそ描くことができたレンブラント狂想曲だ。競売にかけられた絵の所有権や真偽を巡って、コレクター、専門家、メディアなど様々な人たちの思惑が交錯し、あわや国際問題にまで発展しかける。思わぬ展開の連続と生々しい人間の腹の探り合いは、”事実は小説よりも奇なり”で地でいく上質なサスペンス劇。そこには高騰するアート市場の皮肉も込められているが、改めて感じさせられるのは今もって人々を魅了するレンブラントの才能と魔力。登場人物が熱く作品を解説してくれるので、レンブラント入門の教材としても最適だ。

  • 心の傷を癒すということ《劇場版》
    今に響く安先生の志
    ★★★★★

    NHKは長年、震災をテーマにしたドラマ制作に挑み続けている。ドキュメンタリーではなくあえて実写。当事者の言葉にならない思いや叫びを今に蘇らせる術があることを実感する。本作も然り。安克昌先生は阪神淡路大震災時、被災者の心のケアを行ないPTSDを日本に広めた方だが2000年に早逝した。安先生なら東日本大震災、そしてコロナ禍で心に傷を負った人たちにどんな言葉をかけただろう?と想像せずにはいられない。だが、本作が安先生の遺志を伝える。「心の傷を癒すということは、誰もひとりぼっちにさせへんこと」と。同時に本作は有事に何かと切り捨てられがちなエンタメだが、その力を改めて私たちに伝えてくれるに違いない。

  • チャンシルさんには福が多いね
    好調な韓国映画界の片隅で
    ★★★★★

    アラフォーの自分探し物語としてはもちろん、業界裏話としても秀逸。主人公が元プロデューサーなら、家政婦として厄介になるのは自分磨きに必死な新進女優。その彼女の仏語教師の本業は映画監督だ。好調な韓国映画界の実態を映し出す。とりわけ主人公が映画会社社長から「監督あってのあなた」と蔑まれるシーンはリアル。本作の監督はホン・サンス監督の元P。間違いなく実体験を投影したのだろう。だが本作を見れば一目瞭然。とぼけた笑いもウイットに富んだセリフもホン作品を彷彿とさせ、彼女の存在が大きかったことを証明する。何より半径2mの世界をエンタメに仕上げた手腕は見事。自分を過小評価した人たちへの一矢を報いた痛快作である。

  • 陶王子 2万年の旅
    改めて見つめたい器の歴史と人類の知恵
    ★★★★★

    陶芸に詳しい人なら既知の事柄かもしれない。それでも器の精霊”陶王子”による巧みな導きと美しい映像に魅せられ、引き込まれずにはいられない陶磁器の歴史。それは自然から日用品を生み出した先人の知恵を受け継ぎながら、ファイン・セラミックまで誕生させてしまった人類の足跡でもある。そこでふと考える。食べ物を盛る用途だけなら葉でも手だっていいはず。なぜ器に実用性だけでなく芸術性も求めてきたのかと。そこには先人たちが営みの中で食に重きを置き、地球の恵みを頂戴する行為への感謝が託されていたはず。図らずにもコロナ禍で食とじっくり向き合う機会を得た今だからこそ本作で綴られる物語の数々が胸に響くはずだ。

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