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アナザーラウンド (2020):映画短評

アナザーラウンド (2020)

2021年9月3日公開 117分

アナザーラウンド
(C) 2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

ライター9人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

中山 治美

笑いと酒の向こうに、人生の愛しさと哀しみ

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

物事をジェンダーで判断するのは憚れるが、しかし哲学者の「ホンマかいな?」の理論を実践するあたり、集団になると途端に学生に戻ってしまう男子ならでは。まして酒飲みなら尚更、酒は何も解決してくれないことを知っているはず。そうとは分かっていてもやめられないのが酒の魔力であり、ミッドクライシスを抱えた彼らの切実さを推し量らずにはいられない。図らずしもコロナ禍において飲酒は社会の敵となってしまった。本作は決して酒を肯定も否定もしていないだけに、余計に人間の営みにおいて酒の存在意義とは?と考える良い機会。自戒を込めて。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

飲み過ぎはダメ、でも飲まなくてもダメ!?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 “酒は飲むべし飲まれるべからず”ということわざがあるが、それを地で行く本作。

 舞台は“どうせこの国は飲んだくればかり”とセリフで皮肉られるデンマーク。マッツふんする主人公は、酒を呑むことで得られる陽気さと、失われる理性のギャップに直面。そのバランスが本作の主題だ。酒は人生を豊かにするが滅ぼしもする。本作が示すアルコール血中濃度の振り幅は酒飲みの心の揺れのよう。

 面白いのは、そんな彼が教師であること。酒を呑んで授業をしたら生徒と心を通わせられた……というのは倫理的にはビミョーだが、自分のような呑み助には頷ける。共感できるか否かは飲酒癖にも依るだろう。が、ここには確かに浮世の現実がある。

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くれい響

酔いどれ教師の人体実験

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

主人公は『ハングオーバー!』『ワールズ・エンド』にも通じる、酔いどれオヤジたち。本作も“人体実験”ともいえるコミカルテイストで幕を開けるが、そこはヒューマンドラマ重視のトマス・ヴィンターベア監督。「酒は飲んでも飲まれるな」な教訓だけでなく、人生の機微なども描かれ、人生讃歌としてまとめたエンディングに思わず拍手。先の作品群とは、ちょっとレベルが違う仕上がりだ。年齢を重ねることで、いい味を出してきたマッツ・ミケルセンの代表作でもあり、長年封印していたダンスも披露。ちなみに、デンマークでは自宅であれば、何歳でも飲酒可ということを知っておくと、観方がちょっと変わるかもしれない。

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なかざわひでゆき

迷える平凡な中年オジサンを演じるマッツ・ミケルセンが新鮮

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 「中年の危機」ですっかり無気力になってしまった高校教師が、「人間の血中アルコール濃度を0.05%に保てば自信とやる気が漲って人生も上向く」という仮説を知り、仲間を誘って仮説を実証しようとしたところ、むしろアルコール依存症で人生も家庭も破壊しかけてしまう。結局のところ、アルコールで得られる高揚感など束の間の現実逃避にしか過ぎず、勇気をもって問題の根本と向き合わねば何も解決しないという教訓。迷える平凡な中年オジサンを演じるマッツ・ミケルセンというのも新鮮で、クライマックスでは若い頃にバレエで鍛えたダンスの腕前も披露してくれる。

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山縣みどり

血中アルコール濃度0ではダメですか?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

やる気も気力もない中年教師が同僚とともに始める「血中アルコール濃度0.05%で気分アゲアゲ」実験の結果は? どんどん深みにハマるアルコールの恐ろしさを伝えつつ、中年の危機を迎えた男たちの葛藤になんとなく納得させられる。無様とも言える現状打破や無気力への抵抗がコミカルで、冒頭で描かれる高校生の若気の至りと変化がないあたりに主人公たちの成長の遅さを感じる。酒の力を借りずとも幸せになれると下戸ならば思うはず。役者は皆、酔っ払い演技が上手で、本当に飲酒しているかのよう。ほろ苦さのある締め方は、予想を超えないが、マッツ様が披露する華麗なダンスは嬉しい驚き。さすが、元ダンサー!

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平沢 薫

笑いと苦さのバランスが絶妙

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 仲のいい高校教師4人が40歳になり、ふと自分の人生はこれでいいのかと思ってしまってジタバタするという、いわゆる"中年の危機"の話。なのだが、その状態を打破するための手段として「人間は血中アルコール濃度を常に0.05%に保つともっとも幸福な状態でいられる」という理論を実践するという展開がユニークで楽しい。これを実行した4人は、世界が別の角度から見えるようになるのだがーー。そんな愉快なストーリーに笑いだけでなく、切なさ、苦さが盛り込まれているのは『光のほうへ』『偽りなき者』と人間の細やかな心理を正面から描いてきたトマス・ヴィンターベアの監督・共同脚本だからだろう。その笑いと苦さのバランスが絶妙。

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森 直人

われらの人生は最高

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

トマス・ヴィンターベアは「人生を祝福する映画」と本作を明確に定義している。元々理不尽だらけの世の中は、今さらにヘイトな感情で溢れている。排除、差別、行き過ぎの正義。「0か100か」の潔癖思考が世界を窮屈にする中、この映画がそっと説くのは血中アルコール濃度0.05%のススメだ。少しだけユルめる、ハメを外す、楽しむ。『ハングオーバー!』ばりの馬鹿騒ぎを通して、人生の歓びとは何だとの根本を問い掛ける。

『光のほうへ』や『偽りなき者』などヨブ記ばりの苛酷な試練を軸に人生を描いてきた監督は、光の探し方をくるっと反転させた。そうして「誰が何と言おうと人生は最高」なんだとマッツ・ミケルセンは踊り続ける。

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猿渡 由紀

酒の危険さから目を逸らさないが説教はしない

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

酒の危険さや依存症の深刻な問題については近年多く語られてきた。しかし酒は楽しみや良いことをもたらしてもくれる。そんな人と酒との微妙な関係を4人の中年男たちを通してまっすぐ見つめるのが今作。どんどん調子に乗っていく彼らに「やばいぞ、やばいぞ」とドキドキさせられ、予想通り暗い出来事も起こる。そうやって酒が招く害からも目を逸らさないが、かといって説教くさい結論を出さないところが新鮮。何よりも、今作は、ミッドライフクライシスに陥った主人公が人生を見つめ直し、出口を探していく物語。人がもつ欠点、弱さ、思うようにいかない人生の辛さ、友情のありがたさと希望を語る、ユニークな人間ドラマだ。

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斉藤 博昭

ホロ酔い人生の喜びに、マッツ好きな人なら身悶えするシーンも

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

徹底してリアリティ重視の「ドグマ95」で有名なデンマーク映画界にあって、このヴィンターベア監督はエンタメも得意な人だと改めて実証。つねにアルコールを摂取してる状態が人生を良き方向に導く、という怪しい理論を、学校の授業、家族関係で痛快ノリでみせていく。若者のビール飲み大会も強烈だし、基本は中年教師たちの変貌に笑うコメディながら、予想どおりとはいえ、危ういエピソードも顔をもたげ、観た後に思い切り飲みたくなる一方、シビアな人間ドラマの正当な後味も。

ホロ酔い状態のマッツ・ミケルセンの愛おしさは異常レベルだが、ダンサーとしての彼の才能が爆発するシーンに、ファンならずとも悶絶の境地を味わうことだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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