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沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~ (2020):映画短評

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~ (2020)

2021年8月27日公開 120分

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~
(C) 2019 Resistance Pictures Limited.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.2

なかざわひでゆき

復讐のためではなく命を救うために戦う

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 マルセル・マルソーといえば「パントマイムの神様」として有名だが、自身もユダヤ系フランス人だった彼がまだ若かりし頃、対ナチスのレジスタンスとして大勢の同胞の子供たちを救ったという実話を描いた作品。映画としては非常にオーソドックスで、古めかしく感じられることは否めないものの、芸術を愛して世事に疎かった若者が良心に突き動かされ、復讐のためではなく命を救うために戦うという物語には多くが共感できるだろう。ただ、宿敵である「リヨンの虐殺者」ことクラウス・バルビーを、終戦後に米軍が反共活動に利用するため匿ったという不都合な事実が最後のテロップで触れられないのは、やはりアメリカ資本が入っているからか。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ヒューマニズムとサスペンスが高濃度で一体化

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 今夏はナチスのホロコーストを題材にした作品が多数公開されたが、本作ではそこにマルセル・マルソーという天才パントマイマーの知られざる若き日がクスロオーバーする。

 レジスタンスに身を投じ、同胞であるユダヤ人の孤児たちをナチスから守ろうとする奮闘。ともに行動するも犠牲になる同志たち。美談に走らず、極限下での人間の罪悪感をも見据えた、壮絶なサバイバルのドラマが息づく。

 それにしても、このサスペンス演出は巧い。冒頭の歴史に名高い“水晶の夜”の描写からしてスリリングだが、ナチスの協力者が誰なのかわからない状況が続き、目の離せない2時間。とりわけ、列車内でのナチスとの接近遭遇の場面に息を飲む。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

パントマイムの代名詞といえる偉人にこんな事実があったとは!

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ある程度の年齢の人なら、パントマイム、イコールこの人の姿が浮かぶはず。第二次大戦下でのナチスに対するレジスタンス行動に、マルセル・マルソーがここまで命をかけたことを知って驚愕。元々の姓をマルソーに変えた経緯など知られざるエピソードの数々でじっくり胸を締めつけてくる。
子供たちを保護し、国境を超えて逃げようとする苦闘は、牧歌的だった名作『サウンド・オブ・ミュージック』を、リアル&ダークに蘇らせた様相。緊迫のサバイバル劇に過激なアクションを加味して描くあたりはじつに映画的。
そういった流れなので、マルソーのパントマイムはあくまでもポイント。芸達者アイゼンバーグで、もうちょっと至芸を見たかった気も。

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平沢 薫

青年がなぜパントマイムをするのかを描く物語が美しい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 後に"パントマイムの神様"と呼ばれるようになる人物は、なぜパントマイムに没頭するようになったのか。それを描く物語が美しい。彼は、迫害から逃れてきた言葉の通じない異国の幼い子供たちに、彼らが味わった恐怖をわずかの間でも忘れさせるため、言葉ではなく身体の動きで彼らを笑わせようとするのだ。そしてその行為は、レジスタンス運動の人々の、声を上げて批判するのではなく、黙々と難民救済を続ける姿にも重なっていく。自分のアートのことしか考えない青年だった主人公が、やがて、敵を攻撃することよりも生き延びることが何よりの復讐だと考える人物になる。その静かな変化を、ジェシー・アイゼンバーグが自然体で演じている。

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猿渡 由紀

マルソーの意外で偉大な功績を誠意たっぷりに語る

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

有名になる前のマルソーの、意外かつ偉大な人生をたっぷりの誠意を持って語る。映画のはじめで、彼は自分のことしか考えない若者。その部分にはいかにもジェシー・アイゼンバーグらしいコミカルさがあるが、彼がj子供たちと心をつなげていく描写には、やや作られた感も。いざ本格的な恐怖が迫ってからはトーンが大きく変わってアクションスリラー的になり、アイゼンバーグのシリアスで感情の幅のある演技の見せどころとなる。かなり自由な形で映画化したことは、当時10代だったマルソーを37歳のアイゼンバーグが演じるところにも明らか。それでも、彼の功績と、彼や亡くなった方々に対して作り手が持つ敬意と誠意に揺るぎはない。

この短評にはネタバレを含んでいます
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