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ミナリ (2020):映画短評

ミナリ (2020)

2021年3月19日公開 116分

ミナリ
(C) 2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

相馬 学

ばあちゃんに、ドラマのスピリットをみる

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 監督の実体験を投影した作品で、それだけに血の通った人間のドラマになっている。長所も欠点も併せ持つキャラクターが、とにかく愛おしい。

 家族の絆の物語ではあるが、面白いのは夫婦の関係が最初から最後までギスギスしていること。口論ばかりで、いつ破綻しても不思議ではないのだが、それでもなお結びついている関係に家族のリアルを感じた。

 何よりも重要なキャラはユン・ヨジョンふんする祖母だ。家族を結びつける存在にして、重要なセリフを語り、そして映画の生死感を反映した人物。彼女の存在を考えるとき、この映画のテーマに確実に近づける。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

愛し、支え合うのが家族のあり方と心に沁みます

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

西海岸からアーカンソーへ越し、農業で一旗上げたい韓国移民の男と家族の絆を描くヒューマンな物語だ。一家が体験する細々とした出来事をつなげてアメリカンドリームに翻弄された家族の揺れへと物語を進め、ホッとする着地点を見出した監督のストーリーテラーぶりが見事! 監督の両親がモデルであり、息子デヴィッドが彼の分身だろう。アメリカ生まれの少年と韓国人の祖母が徐々に絆を培う展開が微笑ましい。また彼と姉が幼いながらに両親の苦労と関係の変化を敏感に感じ取っている様が切なく、心に沁みた。子役アラン・キムは実に自然だし、ベテラン女優ユン・ヨジョンがまたもや巧みな演技を披露して物語に深い余韻を残す。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

移民たちの体験をあえて普遍的な物語として描く

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ここには、ずっと太陽の光が降り注ぎ穏やかな風が吹いている。韓国からアメリカに移住した一家の物語を、異文化衝突の話としてではなく、人種も国籍も関係なくどの場所にもどの時代にもいる、新たな土地にやってきて熱心に働く貧しい人々の話として描く。そして、その地が彼らを受け入れるさまを、人々の行動ではなく、そこにある土と水、植物の在りようとして描く。それが普遍的な物語となって見る者の胸を打つ。
 一家の暮らしには辛い出来事も多々起こるのだが、その土地にいつも光と緑があり、一家の幼い息子がその年齢に相応しく屈託なく伸びやかに成長していくさまが映し出されるので、大気が最後まで健やかで明るい。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

新たな形のフロンティアムービー

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

フロンティアスピリットというのはアメリカ独自の感覚かと思いますが、韓国系移民を主人公に据えたことで、限りなく現代に近い時代設定で、この開拓者の物語を作って見せたのは、何よりもコロンブスの卵でした。
ゴールデングローブ賞での取り扱いで嫌な話題の取り方をしてしまったことが残念です。
キャストの中ではやはりユン・ヨジョンの存在が光りますね。エンディングに向けてどんどん存在する意味が光っていきます。アメリカの意外な一面を描いた秀作でした。『パラサイト』に続くか?

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

『おばあちゃんの家』に匹敵する“ハルモニ映画”

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

アメリカンドリームを夢見る両親に、姉と連れられてこられた少年にとって、「らしくない、おばあちゃん」との距離感が時間をかけて変わっていく。そんなブラピ製作の正真正銘のハリウッド映画ながら、『おばあちゃんの家』に匹敵する“韓国ハルモニ映画”でもある。何気なくイチモツの話をするなど、今年日本公開作が続くユン・ヨジョンの芝居がとにかくスゴい。その一方、夫婦間の葛藤や世間の偏見などの描写は、どこか既視感があり、もうひと捻りほしかったところ。とはいえ、このタイトル以外考えられない物語のうえ、『パラサイト 半地下の家族』がハリウッドを制した後に観ることで、感慨深い仕上がりといえる。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

ドラマチック過ぎず、噛みしめるほど味わいが深くなる

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

「北の国から」のテーマが流れてきそうな、移民一家のフロンティア物語は、劇的な展開もあるものの、基本的には日常シーンの連続。その穏やかなタッチに、知らず知らず心地よくなっていく。だから、主人公たちと環境や運命は違っても、多くの人が経験する新天地での不安や未来への希望が普遍的に降りてくる感じ。いつまでも彼らの時間に浸っていたくなり、観ている間以上に、観た後に感傷がしみわたるパターンかと。

主演スティーヴン・ユァンが昂まる感情をあえて抑えて、逆に感情移入させる高難度の演技アプローチを成功。その分、一家の異端者としてのバアちゃん、ユン・ヨジョンの豪快なマイペースぶりが際立つという好循環が発生する。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

文化や時代の違いを超えて伝わる家族の物語

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

アメリカには韓国からの移民が大勢いるのに、その人たちの話がハリウッドで語られたことはなかった。監督の個人的体験をもとに書かれた今作は、せりふもほとんど韓国語だし、ディテールも忠実で、とても新鮮。一方で、誰もが共感できる作品でもある。家族が困難をどう乗り越えていくのかについての話だからだ。ひよこの雄雌を鑑別して一生を終えたくないと、自分の事業を始めた夫。反対はせずとも、お金がないだけに不安を覚える妻。祖国から母を呼び、狭い家で同居することが生むストレス。そういったことに、時代も、国境もない。タイトルにある野菜“ミナリ”が、すばらしいメタファーの役割を果たしている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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