縦型の舞台が、そのまま現代社会にリンクする!

ミステリアスな不条理性や幾何的な舞台設定に『CUBE』のような魅力を漂わせながら、本作は現代的な問題を提起してくる。
ワンフロアにふたりだけ、居住フロアは月ごとにシャッフルされ、下層に行けば行くほど飢えはヒドくなる。時に残酷で、時にえげつないバイオレンスは、醜い争いを止められない人間の本質や、貧国の残虐性を象徴しているかのようだ。
連帯を訴える主人公の理想も、飢えと侮辱がはびこる“縦社会”には響きにくい。ソリッド・シュエ―ション・スリラーの型式を借りて、社会の今を見据えた力作。ジャンル映画とテーマ性を絶妙にブレンドしてみせた新鋭G・ガステル=ウルティアの名は、ぜひとも覚えておきたい。