山水画の絵巻物の形式で世界を写し取る

絵巻物を巻き広げていくと、新たな風景が出現していき、それと同時に時間が流れていく。この映画はその形式で世界を写し取る。作中でも山水画の絵巻物が映し出されて、同じものだということがよく分かる。画面は大河の流れを映し出しながら、流れに沿って水平移動していく。カメラの移動速度は、大河を流れる水と同じ緩やかさで、同時に映画の中を流れる時間とも呼応している。初夏から始まり、秋、冬、春を通ってまた初夏へ。カメラが映し出す大河の周囲には、変わらない山河があり、激変する建造物があり、老母と4人の息子それぞれの家族の暮らしがあり、それらもまた変わらなかったり変貌したりする。そして、時間がゆっくり流れていく。