徹底したリアリズムで描かれるイラン版麻薬戦争の最前線

いやあ、これは驚いた。警察の麻薬撲滅特捜チームと麻薬組織の激しい攻防戦を描いたイラン版『ボーダーライン』。末端の売人ホームレスの一斉検挙から始まってトップのボスを追いつめていくまでを、徹底したリアリズムとバイオレンス、そしてダイナミックなカメラワークの畳みかけで描いていく。その過程で、麻薬汚染の元凶である庶民の凄まじい貧困、弱者の人権を蔑ろにする理不尽な社会システム、さらには権力を笠に着た警察の横暴といった現代イラン社会の闇がこれでもかと暴かれていくのだ。2時間越えの長尺もあっという間の迫力。娯楽アクションとしても社会派ドラマとしても第一級の出来栄えである。