好調な韓国映画界の片隅で

アラフォーの自分探し物語としてはもちろん、業界裏話としても秀逸。主人公が元プロデューサーなら、家政婦として厄介になるのは自分磨きに必死な新進女優。その彼女の仏語教師の本業は映画監督だ。好調な韓国映画界の実態を映し出す。とりわけ主人公が映画会社社長から「監督あってのあなた」と蔑まれるシーンはリアル。本作の監督はホン・サンス監督の元P。間違いなく実体験を投影したのだろう。だが本作を見れば一目瞭然。とぼけた笑いもウイットに富んだセリフもホン作品を彷彿とさせ、彼女の存在が大きかったことを証明する。何より半径2mの世界をエンタメに仕上げた手腕は見事。自分を過小評価した人たちへの一矢を報いた痛快作である。