主人公の見開いた目が問いかけ続ける

主人公のいつも何かに驚いているかのように見開かれた目が、ずっと世界に問いをなげかけ続ける。この映画を見るということは、そのまなざしを見つめ続けるということだ。
主人公の瞳の冷たく薄い緑色は、彼を取り巻く世界の色と同じ。その冷えた世界を歩む主人公の前に、もしもここでこの人が許したら、彼は迷い込んだ道から歩み出ることが出来る、変わることが出来る、という機会が何度も出現する。しかし、そのたびに許しは与えられず、そのために彼はそこから脱出できない。人々の不寛容のために、彼だけでなく、誰も救われることがなく、世界が変わることもない。そんな世界が、冷たく燻んだ薄い緑色の大気の中に静かに描かれている。