主人公の見開いた目が問いかけ続ける

2021年1月6日 平沢 薫 聖なる犯罪者 ★★★★★ ★★★★★

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聖なる犯罪者

 主人公のいつも何かに驚いているかのように見開かれた目が、ずっと世界に問いをなげかけ続ける。この映画を見るということは、そのまなざしを見つめ続けるということだ。
 主人公の瞳の冷たく薄い緑色は、彼を取り巻く世界の色と同じ。その冷えた世界を歩む主人公の前に、もしもここでこの人が許したら、彼は迷い込んだ道から歩み出ることが出来る、変わることが出来る、という機会が何度も出現する。しかし、そのたびに許しは与えられず、そのために彼はそこから脱出できない。人々の不寛容のために、彼だけでなく、誰も救われることがなく、世界が変わることもない。そんな世界が、冷たく燻んだ薄い緑色の大気の中に静かに描かれている。

平沢 薫

平沢 薫

略歴:映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「日経エンタテインメント!」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」「Movie Walker」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況:「獣の棲む家」@Netflixが、ゴーストハウス映画の変形版として見ても興味深い。アフリカからロンドンへ移民してきた夫婦が住むことになった家で怪異が起きるが、そこには夫婦の過去、彼らのルーツ、移民をめぐる現状が絡んでいるという現代的恐怖譚。

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