“宇宙人”が人間に説く、ユルくもリアルな哲学

サン・ラーは前衛的な作風に加え、ぶっ飛んだ思想で知られるジャズアーティストだが、本作ではそんな彼の思想がブラックスプロイテーション映画の枠組の中で語られる。
“星も惑星も何もかも正しい場所にある。ズレているのは地球だけ”という歌に象徴された文明批判が人種差別への風刺に直結。宇宙的な視野を持つサン・ラーのユニークな哲学には訴えかけるものが確実に宿る。
とはいえ真面目にそれを語るわけではなく、映画はSFやユーモア、エロスに彩られ、1970年代カリフォルニアののどかさも手伝い、ノンビリとした印象をあたえる。“宇宙人”サン・ラーのピースな世界を、当時のユルい空気ごと楽しんでしまうが吉。