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FUNAN フナン (2019):映画短評

FUNAN フナン (2019)

2020年12月25日公開 87分

FUNAN フナン
Les Films d'Ici - Bac Cinema - Lunanime - ithinkasia - WebSpider Productions - Epuar - Gaoshan - Amopix - Cinefeel 4 - Special Touch Studios (C) 2018

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

圧政下で奪われた我が子を取り戻さんとする母親の執念

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台は’70年代ポルポト政権下のカンボジア。クメール・ルージュによって家も財産も剥奪され、田舎の農村で再教育という名の強制労働に従事させられる平凡な大家族。仲睦まじかった一家の絆は過酷な環境でどんどんと荒み、やがて一人また一人と悲惨な最期を遂げていく。そうした中、離れ離れになった幼い息子を取り戻すため、なんとしてでも生き延びようとする母親の執念が描かれる。カンボジア系フランス人である監督の母親の実体験が基になっているとのことだが、ポル・ポト派台頭の背景として都市部と農村部の経済格差や教育格差に起因する‟持たざる者の憎悪“にも触れ、彼らを怪物的な悪人として描いていないところも興味深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

自然の美と人間の哀しみ

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

本作の隣にそっと並べたいのは『消えた画 クメール・ルージュの真実』(13年/監督:リティ・パニュ)だ。少年期にカンボジア内戦を体験した監督による、土人形を使った「記憶」の強烈な映画化。対して『FUNAN』は85年パリ生まれの新鋭、ドゥニ・ドーの母親の体験がモデルになっており、「カンボジアは女性に似ている」との監督の発言が作品理解の助けになると思う。

ポル・ポト率いるクメール・ルージュの蛮行と対比するように、基調となるのは「母なる自然」の感覚。米バラエティ誌が『火垂るの墓』を引き合いに出しているが、確かに高畑勲の系譜にあると言え、リアリズム寄りの日常描写の静けさと詩情が内戦の残酷を際立たせる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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