自然の美と人間の哀しみ

本作の隣にそっと並べたいのは『消えた画 クメール・ルージュの真実』(13年/監督:リティ・パニュ)だ。少年期にカンボジア内戦を体験した監督による、土人形を使った「記憶」の強烈な映画化。対して『FUNAN』は85年パリ生まれの新鋭、ドゥニ・ドーの母親の体験がモデルになっており、「カンボジアは女性に似ている」との監督の発言が作品理解の助けになると思う。
ポル・ポト率いるクメール・ルージュの蛮行と対比するように、基調となるのは「母なる自然」の感覚。米バラエティ誌が『火垂るの墓』を引き合いに出しているが、確かに高畑勲の系譜にあると言え、リアリズム寄りの日常描写の静けさと詩情が内戦の残酷を際立たせる。