チャドウィック・ボーズマンの才能が炸裂する

今年8月、43歳の若さでこの世を去ってしまったチャドウィック・ボーズマンの最後の作品であるこの映画は、彼の豊かな才能のショーケースと言っていい。伝説のシンガー、マ・レイニーについての話だが、ボーズマンが演じる役はフィクションで、それが彼に大きな自由を与えている。奔放で、セクシーで、エネルギーに満ちていて、人生を謳歌しているように見える一方、心の中に大きなトラウマと怒りを抱えているこのキャラクターから、とにかく目が離せない。マ・レイニーを演じるヴィオラ・デイヴィスのディーバぶりも圧倒。心躍る音楽で魅了しつつ、差別と暴力が人の心に与える傷の大きさも語る、非常に奥深い作品。