新天地で生きる逞しさに、映画愛、夫婦愛が絶妙なハーモニー

ベテラン声優という「あこがれの職業」を得た主人公夫婦が、言葉も通じない新天地で仕事を見つける切実さは、声優文化が発達するここ日本で観ると、より胸がかきむしられるかも。そんな第二の人生への悪戦苦闘ドラマに、夫婦間の微妙な愛とすれ違い、フェリーニを中心にした映画オマージュ、1990年、イスラエルの驚くべき日常を硬軟自在にバランスよく配置。声の特技を駆使した妻のテレフォンセックス稼業や、堂々と劇場で「映画泥棒」の手伝いをする夫など、笑いが込み上げるエピソードにいちいちホッコリしてしまう。冷静に考えればシビアな話だが、基本、軽快なタッチで進むので、心に深く突き刺さるというより、愛すべき一作という印象。