声優夫妻の映画への愛が世界を暖かくする

さまざまな声を演じられるのに、自分の声を出す方法が分からない夫。ある声を使って架空の人物を演じるうちに、それを自分だと思ってしまう妻。声を自在に操る声優夫婦なのに、自分の本当の気持ちを声にするのが難しくて摩擦が起きる。そんな彼らが生きる世界はどこかユーモラスで暖かい。
その世界をさらに暖かくするのが、声優夫婦の映画への愛。夫婦の信念は「吹替こそ映画への入り口」。夫は70年代ハリウッド映画のセリフを暗記している。外国映画が上映されないソ連でフェリーニ映画が上映された史実を踏まえて、フェリーニの遺作「ボイス・オブ・ムーン」が作中に登場。邦題もフェリーニの「甘い生活」へのオマージュになっている。