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トルーマン・カポーティ 真実のテープ (2019):映画短評

トルーマン・カポーティ 真実のテープ (2019)

2020年11月6日公開 98分

トルーマン・カポーティ 真実のテープ
(C) 2019, Hatch House Media Ltd.

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

なかざわひでゆき

愛されることを求め続けた孤独な天才作家

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 現代アメリカ文学を代表する天才作家にして、メディアを賑わせるセレブ・タレントの先駆けでもあったトルーマン・カポーティ。その知られざる実像を紐解いていくドキュメンタリー。浮かび上がるのは、愛を求める孤独な少年の素顔だ。同性愛に対する偏見と闘うため派手な毒舌系オネエ・キャラで武装し、社会から受け入れられるため社交パーティに足繁く通って道化師を演じ、やがてニューヨークの上流階級マダムたちの輪に入るわけだが、しかし結局は出自の卑しい自分が彼女たちのペットに過ぎなかったことを思い知らされスランプに陥る。作家に専念していれば別の人生もあったろうが、しかし愛されたいという願望に抗えなかったのだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

天才作家のコンプレックスと孤独が切ない

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

19歳で作家デビュー、ブラック&ホワイト・ボール@プラザホテルと華やかなイメージが先行した作家カポーティの人生が再現された。未発表の音声テープや彼にとって娘同然だったケイト(恋人の娘)はじめとする人々の証言から浮かび上がるのは、不安定な幼児期の悲しさを抱え続けた男の孤独だ。特に興味を惹かれたのは、彼がスワンと呼んだソーシャライトとの関係性。富とステイタスを持って生まれた彼女たちにとって、おもしろいゲイの小男は宮廷の道化にすぎず、一方のカポーティは彼女たちに愛憎を抱く。そんなアンビバレントな感情が未完の問題作を生んだ図式が実に切ない。謎に包まれたこの小説の行方も知りたいものだ

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

カポーティの小説を読み返したくなる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1984年に没した実在の人物を描くドキュメンタリーだが、映画の目的は、その人物のさまざまな側面を多面的に描くことではなく、ある人物像を明確に描き出すことなのではないか。映画はそのために過去の映像などの傍系証拠を集めて構成されているように見える。そして、そのようにして描き出される人物像が、一風変わった奇妙な魅力に溢れているので、彼の小説をもう一度、この映画で描かれたような人物が書いた作品として読み返したくなる。そして、実際に彼の小説を読み返してみると、これまで無意識のうちに読み落としていたさまざまなものを、今度は読み取ることが出来たような気がしてくる。そして、またこの映画を見直したくなる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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