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82年生まれ、キム・ジヨン (2019):映画短評

82年生まれ、キム・ジヨン (2019)

2020年10月9日公開 118分

82年生まれ、キム・ジヨン
(C) 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

中山 治美

原作とはまた違う魅力

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

本作は、原作モノ映画が主流の日本映画界にとって、非常に参考になるのではないだろうか。人気俳優こそ起用しているが、原作におもねることなく、ファンタジー的な要素も排除し、徹底的にリアルに。いや主人公キム・ジヨンの心が壊れていく様を生身の人間の身体を通して表現すれば、そうなるのが当たり前なのだ。この作品の重さは、まんま韓国社会がMeToo運動といかに真摯に向き合っているかを示す度量。女性たちだけでなく、しがらみだらけの人生で踏ん張って生きているあらゆる人たちにエールを送るかのような映画オリジナルのラストに、活躍めざましい韓国女性監督たちの勢いと頼しさを実感する。韓国映画界の力強さ、ここにあり。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

原作の持ち味が凝縮された映画化

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

“希望”や“救い”を強調したラストこそ違うものの、原作の持ち味や醍醐味が凝縮されていることや、“あるある”エピソード続出の国も超えた共感度の高さでいえば、間違いなく成功といえる映画化だろう。もちろん『はちどり』とともに、今年重要な位置を占める韓国映画の一本でもある。ただ、チョン・ユミ演じるヒロインが他人が憑依した言動を取ってしまう件に関しては、(コン・ユ演じる旦那のナイスガイっぷりも含め、)明確な要因がないことはリアルな反面、その描写に関しては、ちょっと浮いた感もアリ。そのため、テーマが近い『タリーと私の秘密の時間』にはないモヤモヤが残ったのは否定できない。

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なかざわひでゆき

むしろ男性こそ見るべき現代女性映画の傑作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 女性という理由だけで、幼い頃から慎ましさを求められ、男子との目に見えぬ格差を我慢させられ、性被害に遭えば不注意なお前が悪いと責められ、結婚・出産すれば育児と家事を全て任せられ、そのために仕事を辞めざるを得なくなり、それなのに専業主婦は夫の稼ぎで暮らせて楽だと軽んじられる。そんな日本と全く同じ韓国女性の抱える生きづらさを、心の病に陥った平凡な主婦の半生を通して描くわけだが、同時に男性の視点も盛り込まれているところがいい。妻が病気になったことで初めて、世の中の仕組みがいかに女性にとって不利で、そのことに対してどれだけ男性が無自覚に甘えているのかを気付いていく夫。これは絶対に男性も見るべき。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

「女だから」と一度でも言われたなら、ヒロインに共感するはず

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

幸せな生活を送っていたはずの女性ジヨンが本人も気づかぬまま精神に歪みを生じてしまう。と書くとホラー映画っぽいが、女性の人格を尊重することを再確認させる啓蒙作品だ。男につけまわされても「お前に隙があるから」と父親から叱責され、就職先では“腰かけ”と思われて重要な仕事は任されない。結婚しても夫の家族に気を使い、“私”はいつも二の次。女性であるがゆえに体験する差別や理不尽に疲弊するヒロインに自身を重ね、共感する。21世紀になっても旧態依然のままの社会構造が女性を疲弊させるんだよな〜。ただジヨンの夫がとても思いやりがあり、ヒロインだけでなく観客にとっても一筋の光明となる。コン・ユがいい仕事しています。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

生きにくさの物語 

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

男性にこそ見られるべき作品です。
物語は幼少期から、現代にいたるまで、女性であることを理由に、あらゆる世代で理不尽や不平等を感じ続けてきた女性の物語です。
なので、女性はかなりの割合で共感する部分が多いでしょうから、自然と見ようという気持ちが生まれるでしょう。
しかし、
この映画は男性に見られることで、初めて真価を発揮する映画です。わかっているようなつもりでいた男どもにガツンと一発、かましてきます。

この短評にはネタバレを含んでいます
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