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博士と狂人 (2018):映画短評

博士と狂人 (2018)

2020年10月16日公開 124分

博士と狂人
(C) 2018 Definition Delaware, LLC. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.3

轟 夕起夫

「混ぜたら危険!」そうなあの2人が、魅せてくれます

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

かの「オックスフォード英語大辞典」誕生に関わった、共にクレバーだがマッド要素も有す実在の2人に、「混ぜたら危険!」そうなメル・ギブソンとショーン・ペンをキャスティング。これが功を奏し、さらに周囲にエディ・マーサンほか巧みな役者陣を揃え、舞台設定の19世紀へといざなう衣装や美術も見応えあり。

驚くべき秘話と合わせて“言葉の力”に光が当てられ、一方、辞書にはラベリングできない、人間を突き動かす無意識、感情の不可思議さに迫ろうとした姿勢も良し。ただし、世界最高峰の大辞典のバックストーリーだけに、これは長尺向きだったのでは(例えば原作通りに、精神病院の院長の交代劇は描いてほしかった……)とも思う。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

なんかすっきりしないオックスフォード版『舟を編む』

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

辞典作りの長い道のりと完成時の達成感が見る側にも伝わった快作『舟を編む』的なものを期待したら、肩すかしを食った。アカデミック的には異端な二人の友情も心を病んだ殺人犯の恋模様も共感できないし、残虐な映像が際立って違和感あり。監督の趣味なのか? オックスフォード大の権威主義者に嘲られながらも不屈の闘志でチャレンジした、異色の経歴を持つ編纂者J・マレーの人生模様の方がよほど面白かったのでは? M・ギブソン&S・ペンによる濃厚な演技合戦もお腹いっぱいで、ゲップが出る感じ。明るさの加減や衣装&美術などは時代感を感じさせるし、時代考証もしっかりなされていて隙なし。でもね、退屈なのよ。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

とても頭の良い人たちの映画は、皮肉にも知的さに欠ける

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

すべての英単語を、正確な意味はもちろん、時代による変化までふまえてひとつの辞書に編成するという、ものすごく知的で、辛抱強い仕事をした人たちの物語。だが、残念なことに、映画には知性が感じられない。原因のひとつは、タイトルの“狂人”にあたる、精神を病んだアメリカ人の天才的医師を演じるショーン・ペンがやりすぎなこと。こういう設定のキャラクターなので、大いに叫んだり騒いだりしたいのはわかるが、内面が伴っていないため、薄っぺらく見える。彼と、彼が犯した罪の被害者である未亡人とのちょっとしたロマンスも余計。堅いテーマだけにこういうのも入れたかったのだろうが、結果的に昼ドラみたいになってしまった。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

2人の男が"言葉の力"によって結びつく

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 メル・ギブソンとショーン・ペン。共に強烈な個性と熱を持つ俳優2人が正面からぶつかり合う。しかも演じる役は、真逆なようでいて実は酷似。1人はスコットランド出身で、イングランドの学界では見下されている学者。1人は医師だが戦争で精神的傷を負い、病院に入院させられた患者。2人は英語大辞典の編纂という不可能と言われる大事業を通して結びつく。どちらも情熱を傾けすぎる。そのため周囲に理解されない事態に陥りやすい。2人を映し出す画面に常に光の量が少ないのは、舞台が室内のせいもあるが、彼らが世間の脚光を浴びない場所にいるからでもあるだろう。そんな2人が"言葉"によって想像力を躍動させるという物語が胸を打つ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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