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パブリック 図書館の奇跡 (2018):映画短評

パブリック 図書館の奇跡 (2018)

2020年7月17日公開 119分

パブリック 図書館の奇跡
(C) EL CAMINO LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

相馬 学

今そこにある権力の横暴と戦うために、見るべき快作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 “公共図書館は民主主義最後の砦だ!チンピラどもの戦場にされてたまるか!!”――そんな図書館長の叫びが重く響く。

 とはいえ物語は重いどころか、むしろユーモラス。市政に見捨てられたホームレスと、彼らを館内に匿うことになった図書館司書との、ちぐはぐな交流が笑いを誘う。そして彼らはこの館内騒動を収めようとする警察や市長候補らの権力と闘うことになるが、この権力こそが館長の言う”チンピラども”だ。

 監督兼主演のE・エステベスは昔から横暴な権力との戦いを描いてきたが、社会的弱者の救済を人間味と娯楽性の中に落とし込んだ手腕に演出の円熟味を見た。権力が弱者を踏みにじろうとしている今こそ見るべき逸品。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

民主主義社会はどうあるべきなのかを問いかける

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

タイトルが示すように、図書館は公共(パブリック)の場所。誰でも、自由に、無料で使えるその空間は、しかし、閉館時間が来たら、帰る家のない人たちを、凍える外に放り出さなければいけない。いや、本当にそうしないといけないのか?長年論議されながら一向に解決しないアメリカのホームレス問題に、エミリオ・エステベスは、独自の視点からアプローチする。その過程では、退役軍人への待遇、貧富の差、依存症、心の病といった他の社会問題や、センセーショナルに煽りたがるメディアの姿勢なども触れられていく。それらが、サスペンスやユーモアのある中で語られていくのだ。厳しい現実に向き合いつつ、少しの希望も感じさせてくれる作品。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

アメリカの公共図書館は懐が深いな〜

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

貧富の差が拡大する状況に新型コロナが追い打ちをかける昨今、失職したらホームレスとなる可能性大なわけで、実は他人事じゃないドラマだ。脚本も手掛けたE・エステヴェス監督がホームレスに対する政府(と富裕層)の無関心を暴こうと頑張っている。さすがは戦うリベラル俳優M・シーンの息子だ。図書館占拠事件を自身の出世に利用しようとする政治家やTVリポーターの描写がカリカチュアっぽいが、わかり易さ優先なのだろう。しかしホームレスの描写が甘いのは、減点ポイントだ。実際はメンタルに問題を抱えた人が多く、目からレーザー光線が出ると主張する新入りにそれを集約させるだけでは、真の問題点から目を逸らすことになる。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

そして「文学の力」が立ち上ってくる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 誰もが正しいと思っていることを描く時はそのやり方が難しいが、エミリオ・エステベスが監督・脚本・主演を兼任して描く本作はその難しさをクリア。正論を大声で唱えるのではなく、立場の弱い人々が、権力を持つ人々からの抑圧を、暴力ではなく知恵ですり抜けようとする話に仕上げてみせる。人間ドラマだけでなく、図書館を占拠したホームレスたちとそれに巻き込まれた図書館職員の主人公が、警察の包囲の中をどうやったら無事に外に出られるのかというサブストーリーが展開して、飽きさせない。そんな物語に、図書館での出来事に相応しく「文学の力」を盛り込んであるところが魅力。そこは写実的でははないかもしれないが感動的だ。

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くれい響

職人監督としての小技光る

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

35年前、「自分とは何か?」という課題をさせられた図書館を、今度はホームレスと占拠することになるエミリオ・エステベス。しかも、VS.アレック・ボールドウィン&クリスチャン・スレイターという対立構造に心躍るのは当然だ。貧困・格差問題やフェイクニュースなど、昨今の社会的テーマが渋滞してるだけに、調理次第では収集つかなくなりそうだが、さすがはアメリカン・ニューシネマの申し子。『狼たちの午後』のオマージュといえる展開に、適度なユーモアを加え、なかなかの着地を決める。「怒りの葡萄」からの引用に、ジョニー・ナッシュの「I Can See Clearly Now」の使い方など、職人監督としての小技も光る。

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斉藤 博昭

立てこもり映画のカタルシスと感動に、本の大切さを優しくプラス

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

人質事件や抗議など「立てこもる」映画は内部の結束に感情移入しやすく、変にテンションが上がる。今作もその好例で、場所が公共図書館なのが斬新。ホームレスたちの公共施設利用がどこまで許されるか? 日本も地続きの問題として身近に感じつつ、本による知識があらゆる人に役立つ時があるという図書館の意義をサラリと提示。「本は命の恩人」というセリフがグッとくる。悪役を含め想定どおりの流れも心地よし。

自らをスターにした名作での「図書室」を、監督作で「図書館」でセルフオマージュするエステベスは主役なのに「目立ちすぎない」奥ゆかしさが好感。「外は極寒」という重要設定がもう少し映像で伝わったら、なお良かったけど。

この短評にはネタバレを含んでいます
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