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許された子どもたち (2020):映画短評

許された子どもたち (2020)

2020年6月1日公開 131分

許された子どもたち
(C) 2020「許された子どもたち」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

くれい響

加害者少年の誰も知らない心理

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『誰も知らない』の柳楽優弥ばりに、何考えているか分からない眼力がスゴい主人公や、自粛警察ばりに正義をふりかざし、署名集めに励む転校先の同級生など、ワークショップでキャスティングされた“子どもたち”の存在感は生々しく、演技力が乏しいながらも、どこか引き付けられるものがある。また、息子の無実を都合良く信じ続け、“怪物”と化す母親など、いかにも内藤瑛亮監督作らしい描写やカットもありつつ、相変わらず骨太かつハードボイルドな作風を貫いているのもいい。ただ、加害者少年側に焦点を当てた展開から観客に委ねるラストまで、やはり既視感があることから、131分はちょっと長尺に思えてしまう。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

少年たちの世界に入る大人たちの存在

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

『先生を流産させる会』から始まり、『ライチ☆光クラブ』『ミスミソウ』などの商業ベースの作品でも、少年少女の無慈悲なまでの暴力を描いていきた内藤瑛亮監督。今作でもそのテーマは変わりませんが、大人の介在する部分が大きいのが新しい展開と言えるでしょう
被害者家族、加害者家族、マスコミ、周囲の人間、そしてインターネットという“大人と世間の視点”が加わることで、物語に圧倒的なリアリティが加わりました。
また、その存在は内藤監督が問題提起し続ける社会の不寛容の象徴でもあります。
自主製作のステージでワークショップベースに創り上げてた本作は内藤瑛亮監督の新境地ともいえる作品に仕上がっています。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「考える」装置としてのフィクションの優れた実践例

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

渾身の大力作。少年犯罪を扱った映画の中でもこれは屈指の出来だろう。『先生を流産させる会』から約8年、監督・内藤瑛亮の凄さは問題を「全部」描こうとしていること。加害者と家族の運命の流転を主軸としつつも、いじめ、少年法、母性の強烈と父性の脆弱、同調、勇気、SNS、正義、バッシング、贖罪……あらゆるアングルの視座を据え、関係性の反転を見逃さず、なるだけ「判断」に傾かず、カタルシスの快楽に逃げず、ひたすら真ん中で考え抜くことに徹した姿勢は極めて貴重だと思う。

むろん『牛乳王子』から『ミスミソウ』まで内藤映画の全部入りでもあり、白昼夢のような河川敷などリアルと寓話性の融合やホラー的文体の応用も見事。

この短評にはネタバレを含んでいます
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