ADVERTISEMENT

名もなき生涯 (2019):映画短評

名もなき生涯 (2019)

2020年2月21日公開 175分

名もなき生涯
(C) 2019 Twentieth Century Fox

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

山縣みどり

初の実話ものでもT・マリックの世界観は変わらず

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

オーストリアの農村地帯で平穏な暮らしを追う映像の美しさと、主人公一家が味わう苦難の日々の対比がとても悲しい作品だ。「戦争、バンザイ!」「ハイル、ヒトラー」な世間の風潮に争って良心的兵役拒否をしたフランツと愛妻ファニそれぞれの思いがモノローグとなっていて、一言一言が心にしみる。素晴らしい脚本だし、書簡集からの抜粋だけに言葉に説得力がある。T・マリック監督初の実話ものであり、トリッキーな編集がなく、見やすい。しかし自然光を生かした絵画のような映像と哲学的&宗教的な探求という彼の世界観は変わらず。役者陣の確かな演技とJ・ヴィトマーのカメラが人間の複雑な内面を浮かび上がらせる。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

主人公の言葉にひたすら耳を澄まし続ける

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 音楽を聴くように、詩を読むように、見る映画。原作は実話で、実際に起きた出来事が描かれていくが、何が起きているのかという説明は一切ない。冒頭から結末まで、ただ、そのとき主人公が何を感じ何を想ったのかが、まるで詩のような言葉で、一人称の静かなモノローグの形で語り続けられる。そして、その背後に、バッハ、ヘンデル、ブルックナーなどのクラシック音楽が流れ続ける。画面の色調は、風景から衣服まで含めて常に灰青色に保たれ、いつも湿度が高くて気温は低い。この映画を見るということは、その映像と音楽の美に身を委ねながら、その美とは異なる主人公の言葉に耳を澄まし続け、それについて考え続けるということなのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT