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パラサイト 半地下の家族 (2019):映画短評

パラサイト 半地下の家族 (2019)

2020年1月10日公開 132分

パラサイト 半地下の家族
(C) 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

ライター10人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

清水 節

ジャンル横断・空間タテ移動・嗅覚表現で格差を暴く傑作エンタメ

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

富める者と持たざる者が距離を縮めれば何が起きるのか。寄生しているのはどちらか。Wi-Fi無断借用で困窮ぶりを立ちどころに示す冒頭は、2020年前後の格差表現として映画史に刻まれる。対照的な家族を演じる俳優陣の可笑しくも切ない名演が見事。引き裂かれた社会の実相を暴きながらシリアスへ傾きすぎず、コメディからホラーまで多様なジャンルを横断し、高低差著しい空間の上下移動を存分に活かして、4DXでも不可能な臭いまで感じさせる。映画的快楽を詰め込んだエンタメの傑作だ。クライマックス後の余韻が素晴らしい。堕ちる恐怖を抱きながら上昇する計画を夢想し続ける永遠の希望と空しさ。ポン・ジュノの才気に酔いしれた。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

貧困の残酷を衝撃のエンタテインメントとして描いた傑作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 格差社会の非人間性を描くという点で『万引き家族』や『わたしは、ダニエル・ブレイク』と同列に語られるべき映画なのかもしれないが、しかしこのテーマをある種のホラー・エンタテインメントにまで昇華してしまったボン・ジュノ監督の力量には恐れ入る。裕福な上流家庭に寄生(パラサイト)していく極貧家族のなりふり構わなさに苦笑いしていると、やがてとんでもない衝撃的な展開が…!ネタバレゆえこれ以上は言及するまいが、貧困というものがいかに理不尽で残酷で哀しいものなのか、そして人間をどれだけケダモノのように醜く変えてしまうものなのか、これほど痛烈に風刺した作品はなかなかないだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

格差社会をシニカル&コミカルに切り取った快作

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

家族構成は同じでも全てが真逆の二家族の人生が交錯したことで起こる悲喜劇から韓国が直面する格差社会が浮かび上がる。と書くとめちゃシリアスだが、ユーモアたっぷりで、先が読めない展開やアクション、ラブもあり。裕福なパク家と貧しいキム家それぞれを欠点も利点もある人間として描いていて、見る側もそれなりに思い当たることがあるので、どちらの家族にも共感できる。ポン・ジュノ監督らしいショッキングな場面もあるし、人間の沸点ってそれぞれと実感するはず。スメハラって、伝え方が本当に難しいよね。ソン・ガンホとイ・ソンギュンは安定のうまさだし、ポン監督のミューズ(?)イ・ジョンウンが演じる家政婦がいい味出してる。

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森 直人

鬼レベルすぎて歯が立たないのでレファランスで埋めてみました

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ついに観る者を絶句に追い込む大大大大(永遠に続けたい)傑作が日本上陸。土台はかなり明確に“『下女』+『メトロポリス』”だが、それをグローバリズムの世界構造に転写し、『バーニング』『万引き家族』『岬の兄妹』といったポン・ジュノと人脈的に繋がりのある重要作だけでなく、『ジョーカー』等とも共振している。「現代映画の最高峰」と繰り返すばかりだ。

当然これまでのフィルモグラフィを踏まえた総力戦でもありつつ(ハリウッドで得た「判りやすさ」も)、『天国と地獄』等多数のパーツが織り込まれているが、意外と指摘されていないのが『ほえる犬は噛まない』的な団地を舞台に家族総出のコンゲームを展開した『しとやかな獣』!

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くれい響

『万引き家族』と観比べると、ヤバさ倍増!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

去年のカンヌ・パルムドール受賞作『万引き家族』のように、あえて“疑似家族”がストーリーを転がすことで、ドラマ性を強める作品が多いなか、ポン・ジュノ監督は、いつものように血の繋がった家族を主人公に、ストーリーを転がしまくる。“Wi-Fi万引き&内職家族”な、お気楽コメディから一転、ケイパームービーになったかと思えば、「家政婦は見た!」に、ラブやエロもあって、ジャンルを超越。さらに、ポン監督は前々作『スノーピアサー』で列車の水平イメージで表現した格差社会を、今度は長い階段で繋がる山の手と下町の垂直イメージで表現。ざっくり2部構成のなか、後半戦の導入部となるお得意のホラー演出がたまらない!

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平沢 薫

断絶感が激しく、生々しい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 格差社会における富裕層と貧困層の間に広がる距離が、風刺コメディの枠に収まらなくなってしまう瞬間が、突如として出現する。しかもさりげなく。それは、富裕層の一員が"異臭"について言及する瞬間だ。彼らは貧困層を目で認識することはできないが、異臭は感知する。しかし匂いは、倫理感や論理とは関係なく嗅覚を刺激するものだ。それを不快に感じるかどうかは生理的反応で、そこに思考の入る余地はない。そのような形で出現する二者間の断絶が、生々しい。
 格差社会を高台の家と半地下の住居に視覚化して描き、乗っ取り計画のサスペンスもスリリング。それに加えて、この嗅覚による格差の描写が、強烈な印象を残す。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

怪物映画

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

怪物映画という言葉が一番ぴたりと来る映画です。
これはパルムドールですね。『万引き家族』の後のパルムドール作品というのもわかる気がします。
前半戦のコミカルなテイストから一気にツイストさせる後半部は、監督からネタバレ禁止のお願いがでていますが、まず思いつかない展開です。
そして、前半のぐうたらと後半の別の顔。こんな演技をできるのはソン・ガンホしかいないでしょう。
132分の上映時間が全く気にならない凄い構成の映画です。正月明けに見るにはちょっと重量級ですが、必見の怪物です。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

格差が”匂い”に表れる!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 格差社会を背景にした社会派エンタメ作品は『ジョーカー』をはじめ決して珍しくはないが、本作のオリジナリティは格差を“匂い”として表現した点にある。

 山の手の富裕一家に策略的に“寄生”し、仕事を得る貧しい下町の半地下の一家。サスペンスフルな展開はネタバレ回避のために省くが、匂いに収縮する演出が、とにかく巧い。路上で立小便されたら、たまらない。洪水になればトイレも逆流する。とにかく彼らの生活から悪臭は切り離せない。

 映像では伝わらない臭気をセリフや振る舞いで体感させ、なおかつ笑いをこめるポン・ジュノの演出は見事。坂道や階段などの舞台の使い方も、『ジョーカー』に負けないほど巧い。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

最高に独創性豊か。楽しいと思っていたら、考えさせる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

まるで気取りのない、ファニーな映画と見せかけておいて、実はとてもディープでダーク。予測できない展開が次々に訪れる、娯楽性あふれる映画でありつつ、最後には多くのことを考えさせる。そのスマートさには、本当に脱帽。途中で起こるそんなトーンの変化にもまるで無理がないのも、フィルムメーカーの実力の証明と言えるだろう。所得格差は今や全世界における問題で、昨年の「万引き家族」もまさにそれを扱っていた上、両作品ともカンヌのパルムドールを受賞したことから、よく比較されるが、この2作はまるで違い、それがまたこの2作を傑作にしている。キャスティングの妙も、特筆すべき。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

一瞬先も読めない…どころじゃない、衝撃の映画体験

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

「先が読めない」作品はよくあるが、展開自体はもちろん、味わう「感覚」でも予想だにしない瞬間が次々と、怒涛のごとく押し寄せる。コメディやサスペンス、人間ドラマ、アクション、社会性といった多様なジャンルを的確に網羅し、映画ファンには至福体験となる作品だ。

半地下の家で暮らす4人家族のたくましさ、したたかさ、機転と対応力が感情移入を誘い、伏線の回収も含めて計算されつくした脚本。笑いとサプライズの神がかり的タイミング。ポン・ジュノの演出に一切のムダがない。唯一存在しないのはベタな感動。ゆえに過剰な物語に、あざとさが皆無となる。いくつもの感情に心がかき乱され、やがて訪れるのは、ある種の恍惚感だった。

この短評にはネタバレを含んでいます
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