シュヴァルの理想宮の形自体が、別の物語を語りかけてくる

2019年12月2日 平沢 薫 シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 ★★★★★ ★★★★★

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シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

 "シュヴァルの理想宮"は実際にフランスにある奇妙な建造物。まったく建築知識のない一人の郵便局員シュヴァルが1879年に着手し、周囲の人々に変人扱いされながら、33年間の歳月を掛けて自分一人で作った。その造形は既存の様式には属さず、作者独自の不可思議な美意識に貫かれている。
 本作は実際にこの建造物で撮影し、その造形を多様な角度から映し出す。すると、脚本はシュヴァルの創造行為を父の娘への愛の物語として描こうとするのだが、スクリーンに映し出される実際の"形"が、その物語に収まらない。奇妙な動物のような浮彫、重力を無視した階層の連なり、シュヴァルの宮殿の造形自体が、別の物語を訴え掛けてくる。

平沢 薫

平沢 薫

略歴:映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」「Movie Walker」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況:「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」@Amazon Prime の世界が静かで寒くて切ない。クリエイター・コンビの一人は、ディストピア画集「エレクトリック・ステイト」のシモン・ストーレンハーグ。もう一人は「レギオン」「アウトキャスト」の脚本家ナサニエル・ハルパーン。この2人にピンとくるなら必見。

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