ヒョンジェ～釜山港の兄弟～ (2017)：映画短評

　警察官となった優等生の兄と、マフィアの幹部となった不良な弟。幼くして孤児となった二卵性双生児の兄弟が、一人の女性を巡ってお互いに対立しつつ、陰謀と策略の渦巻く裏社会の権力抗争に巻き込まれていく。設定そのものは使い古された感が否めないものの、まるで対照的な性格の兄弟それぞれが背負ってしまった十字架を、その背景となる複雑な生い立ちを交えながら丹念に描くことで、いかに社会の矛盾や不正のしわ寄せが弱者へと向かい、時としてその人生の歯車を狂わしてしまうのかを浮き彫りにする。これが映画デビューとなる韓流ドラマ・スター、ソンフンのクールでストイックな佇まいも魅力的。シェイクスピア悲劇的な韓流ノワールだ。