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あの日のオルガン (2018):映画短評

あの日のオルガン (2018)

2019年2月22日公開 119分

あの日のオルガン
(C) 2018「あの日のオルガン」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

あの時代に日本を戻してはならないと強く願う

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 日本の敗戦が色濃くなってきた太平洋戦争末期、高まる空襲の危険から幼い子供たちを守るため、保育園ごと集団疎開をさせた若い保母たちの実話を描く。これが目から鱗だった。ほのぼのとした雰囲気の幕開けから一転、やがて戦前日本社会の封建的かつ権威主義的な風潮が物語に暗い影を落としていく。勇ましい言葉を叫ぶ愚かな愛国者が大手を振り、女性や子供などの弱者が虐げられる当時の日本にあって、若い保母たちの志がどれほど勇敢で、その試みがいかに過酷なものだったのか。あんな悪夢のような時代に日本を戻してはならないという、作り手の決意にも似た強い願いが如実に伝わってくる

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

疎開保育園版『この世界の片隅に』

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ラジオドラマ「オオカミの末裔」の狼少女やドラマ「死神くん」のブサイク女子など、“女優・大原櫻子”の芝居を評価する者としてはたまらない、デビュー作以来、5年ぶりの主演映画。山田(洋次)組出身だけに、平松恵美子監督の演出は丁寧すぎるぐらい手堅く、時折笑いを交えながら、戦争の悲惨さや女性たちの強い信念といったメッセージを描写。戸田恵梨香の「コード・ブルー」的姉御キャラも見どころだが、泣いて、笑って、オルガンを弾く。そんな大原演じるドジっ子保母の奮闘・成長記として観ると、“疎開保育園版『この世界の片隅に』”としても楽しめる。佐久間由衣など、注目の若手女優映画として観るのも一興。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

将来を作る“子供の命”を繋いだ保母の勇気に感動

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

親の虐待で命を落とす子供の報道が増えるなか、疎開保育園で幼い子供たちの命を救った保母たちの勇気に胸が熱くなる作品だ。政府が命の優先順位をつける戦時下で、保育園児や保母が下等国民扱いされる現実が恐ろしい。疎開先の排他的な人々と上手に付き合いながら、幼い子供を預かる保母の重責や愛する子供を手放した親の不安、親不在な子供の寂しさと当時の庶民のそれぞれの思いがひしひしと伝わってきて、泣ける。非日常を明るくする新米保母が引くオルガンの音色はとても懐かしく、童心に帰った。猪突猛進で疎開保育を進めるヒロイン役の戸田恵梨香は複雑な心模様を見事に表現したし、同僚役の女優のアンサンブルも素晴らしかった。

この短評にはネタバレを含んでいます
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