ADVERTISEMENT
どなたでもご覧になれます

ウォーム・ボディーズ (2013):映画短評

ウォーム・ボディーズ (2013)

2013年9月21日公開 98分

ウォーム・ボディーズ
(C) 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

清水 節

ゾンビは治る!文化系&オタク系男子を愛でるラブコメ誕生

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 主人公のゾンビ男子は、肉は喰らっても草食系だ。“逃げるべき対象”として疎外されるゾンビが、たちまち少女に恋をして、彼女の心を揺り動かしてしまうという新機軸。演出的に甘い箇所は多々あれど、文化系あるいはオタク系と、そんな男子にこそ惹かれる女子たちの、バイブル的なラブコメになる要素を秘めている。
 
 ここでのゾンビは一枚岩ではない。人間に戻ることが出来ない種族は醜いガイコツに成り果てるが、まだ引き戻す可能性を秘めた顔面蒼白のゆったり歩行種族は「空港」に住んでいる。そう、彼らは何かを待っている。それは変化だ。1匹の類人猿がモノリスに触れた時に進化が始まった『2001年宇宙の旅』よろしく、1人のゾンビ男子がときめいた瞬間から仲間も変容し始める。主人公の名はR、少女の名はジュリー。つまり「ロミオとジュリエット」の変奏曲である。生存率50%の青年を鮮やかに描いた『50/50』のジョナサン・レヴィン監督は、生よりも死に近い奥手男子が“障壁”を打ち破るプロセスを描かせたらピカイチ。3次元女子に恋をすればゾンビだって治る。死体同然の日々を送る男子を、むくむくと起き上がらせるポジティブな純愛映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

恋するゾンビは精神的童貞の男子でもある!?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ゾンビ映画に登場するゾンビに感情移入したことがある方は、そんなに多くはないと思う。たいていのゾンビ映画は逃げ惑う人間の側に視点が置かれており、生ける屍であるゾンビはそもそも感情を持たないバケモノとして描かれているのだから。とはいえ、ゾンビも所詮は想像の産物であり、感情を持つゾンビがいてもおかしくはない。ゾンビが人間の美少女に恋をしても、もちろんアリだ。

 そんな独特のシチュエーションをラブコメディにしてみせた本作。恋をしたものの、思いを言葉にして伝えるのはひと苦労だし、高ぶる感情とは裏腹にノロノロとている動きが歯がゆい。そんなゾンビならではの特性が、童貞男子のモジモジぶりに重ならなくもない。好きな女の子を目の前にして体が硬直して言葉が出てこなくなるアレに、主人公の心の声である“何やってんだ、俺…”的なナレーションが重なると、どうしても共感してしまう。

 注目のイケメン俳優ニコラス・ホルトの主演起用も効いており、女性の観客にもアピールする可能性は大。ゾンビ映画という概念を捨てて、ユーモアとロマンスを楽しんでしまいたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
今 祥枝

愛すべき青春ゾンビ・ムービー!

今 祥枝 評価: ★★★★★ ★★★★★

ガチの社会風刺からコメディに進化型まで多彩なゾンビ映画に、ついに純愛系が登場。そもそもゾンビが人間に恋できるのかとか、ゾンビより尚始末が悪いガイコツを真の異形の者として描く設定も含めてツッコミどころは多々ある。だが、これが実に愛すべき青春ゾンビ・ムービーなのだ!

主人公Rが脳みそを食べて他の人間の記憶を追体験するなど、そこはゾンビなのでグロさはある。が、運命の女性ジュリーの勇姿がスローモーションとなる一目惚れのシーンは、まさに青春のきらめき。そして恋に落ちた途端、死後硬直により猫背で上手く話せず、人間じゃないし汚いしで自分に自信が持てないといったRのゾンビっぷりは、奥手な文系男子のじれったさとリンクする。『50/50フィフティ・フィフティ』のジョナサン・レヴィンは本作でもシニカルなユーモアもふんだんに、揺れる若者の心理を丁寧にすくいとっておりぐっとくる。

人間とゾンビの対立には社会風刺も読み取れるしガイコツとのバトルもスリリングだが、醍醐味としては青春映画のそれである。子役から素敵に成長したニコラス・ホルト扮するRは、世界一キュートなトキメキ系ゾンビとして記憶に留めたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

甘ったるいロマンスに逃げない姿勢が好印象

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ゾンビと人間の恋愛なんて、そんなバカな…と思われる向きもあるだろうが、よく考えればゾンビだってもとは人間。ジョージ・A・ロメロの傑作「ゾンビ」の死人たちは生前の行動習慣に従ってショッピングモールへと集まり、「死霊のえじき」では科学者に飼育されたゾンビの人間性への回帰が描かれた。これは、そうしたロメロ作品の系譜をしっかりと受け継ぎつつ、ゾンビ映画のジャンルに全く新しい解釈をもたらした作品だ。
 注目すべきはゾンビと人間の対比。本能のままに人肉を求めて徘徊するゾンビたちは、なんら変化も面白みもない日々を送る虚無的な存在だ。一方、人間も荒れ果てた世界で生きる喜びや希望を見失い、心身共に殺伐としている。まるで現実社会の暗い世相を映し出しているかのようだ。そうした中、現状に疑問を持つゾンビの若者と人間の少女が惹かれ合い、さながら「ロミオとジュリエット」的な葛藤に直面することで、本作は人を人たらしめるものとは何なのかを考察していく。
 シニカルなユーモアはピリッと辛口。グロいシーンにも手抜かりはない。甘ったるいロマンスに逃げたりしない姿勢が好印象。それでいて、後味はとても爽やかで気持ちがいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT