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『ゴジラ』主演で人気の宝田明、流暢な中国語でマカオの客席沸く

中国語で観客を沸かせた宝田明(撮影:中山治美)
中国語で観客を沸かせた宝田明(撮影:中山治美)

 開催中の第4回マカオ国際映画祭で現地時間5日夜、矢口史靖監督のミュージカル映画『ダンスウィズミー』が特別上映された。舞台あいさつには矢口監督と出演者の宝田明が登壇。幼少期を旧満州で過ごした宝田は「使ってないからだいぶ忘れてしまいました」と言いつつ、流暢な中国語であいさつすると、会場から大喝采を受けていた。

 矢口監督が同映画祭に参加するのは、前作『サバイバルファミリー』(2017)で参加した第1回に続いて2度目。しかし今回の上映に関しては、ヒロインの三吉彩花に「音楽を聴くと歌って踊らずにはいられなくなる」という催眠術をかけるマーチン上田役の宝田の存在が大きい。

宝田明、マイク・グッドリッジ、矢口史靖監督
『ダンス・ウィズ・ミー』の舞台挨拶を行った(写真左から)宝田明、映画祭のアーティスティックディレクター、マイク・グッドリッジ、矢口史靖監督(写真:マカオ国際映画祭)

 宝田といえば第1作目の『ゴジラ』(1954)の主演俳優として海外でも知られる。しかしアジア圏では、香港のスター、ユー・ミンさんと共演したラブロマンス映画『香港の夜 A NIGHT IN HONGKONG』(1961)、『香港の星』(1962)、『ホノルル・東京・香港 HONOLULU-TOKYO-HONGKONG』(1963)の3部作で知られる。今も香港で定期的に3部作のレトロスペクティブ(回顧上映)があるという。

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 現地でインタビューに応じた宝田は「1作目が大変なヒットとなりましてね。その後、わたしとユー・ミンさんがロケに行きますと、ファンが詰めかけて空港からホテルへの移動ですら車が動かなくなるくらいだったのです」と当時を懐かしんだ。

宝田明、マイク・グッドリッジ
宝田明(写真左側)の流暢な中国語に驚く映画祭のアーティスティックディレクター、マイク・グッドリッジ(撮影:中山治美)

 実は4作目の準備も進んでいたという。しかしその時持ち上がったのが、ユー・ミンさんの結婚問題。英国帰りの、マカオのカジノ王の御曹司エリック・コーさんからプロポーズを受けたのだ。当時、ユー・ミンさんは宝田に好意を抱いていたようで、決断に迷った末に「わたしと結婚してくれますか?」と逆プロポーズしてきたという。しかし俳優としてこれからという時期だった宝田は、自分よりも、御曹司との安定した生活を勧めたという。

 それがきっかけで4作目の企画はなくなった。そしてユー・ミンさんは1964年にコーさんと結婚して女優業を引退した。残念ながら1996年に59歳の若さでこの世を去ったが、宝田との友人関係はずっと続いていたという。宝田は前回、香港を訪問した際にユー・ミンさんの墓前に手を合わせに行ったそうで「良い友を亡くしました」と故人を偲んだ。

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宝田明
かつて中国北部に住んでいた生い立ちを中国語で語った宝田明(撮影:中山治美)

 一方宝田は3部作に続いて、香港映画『最長的一夜 The Longest Night』(1965・日本未公開)、日本・台湾合作『香港の白い薔薇』(1965)、台湾映画『愛ニィ入骨 Love You Till I Die』(1981・日本未公開)と、得意の中国語を生かして中華圏の作品に出演。今ですら日本の俳優が海外で活動するのはかなりハードルが高いが、はるか以前に軽々と海を越えていたのだ。

 宝田は「上映の舞台あいさつでは思わず『中国文化が好きで、麻雀が大好き』と言いましたが、厳密には日本の麻雀は中国のとは違います。でも文化はまねて良いし、そこから自国の文化を築けば良い。文化はクロスオーバーしていくのが面白いのです。映画もボーダーラインなんて関係ないと思います。良い映画が作られれば、それで良いのです」と持論を展開した。

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 ただ宝田が親愛し、友人たちも住む香港は、「逃亡犯条例改正案」に端を発した一連の抗議活動が続いており混迷を極めている。香港情勢について水を向けると「心配です。一国二制度がうまくいってくれれば良いのですが。しかし、民主的な社会であってほしい、自由な社会であってほしいという要求をするのは、人として当然だと思いますね」と語り、香港の人たちに思いを巡らせていた。(取材・文:中山治美)

第4回マカオ国際映画祭は10日まで開催

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