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ニューヨーク独立系映画館を取り巻く困難な現況

独立系映画館の経営者ニック・ニコラウ
独立系映画館の経営者ニック・ニコラウ

 トライベッカ映画祭(18th TFF)に出品された話題のドキュメンタリー映画『ザ・プロジェクショニスト(原題)/ The Projectionist』について、題材となった独立系映画館の経営者ニック・ニコラウが5月3日(現地時間)、上映後のQ&Aで語った。

アメリカではNetflixによる劇場先行上映なども行われ始めている

 1970年代にキプロス共和国からニューヨークに移住してきたニックは、少年時代からポルノシアターのアシスタントをする中で、徐々にシアター経営に携わり、ニューヨーク市内で独立系映画館を経営するオーナーになっていく。しかし、地価の高騰やNetflixなどの動画配信サイトの台頭により、現在は独立系映画館がニューヨーク市内から消えつつある。本作は、ニックが孤軍奮闘しながら映画館を経営していく姿を捉えたもの。映画『キング・オブ・ニューヨーク』『バッド・ルテーナント/刑事とドラッグとキリスト』のアベル・フェラーラ監督がメガホンを取った。

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 フェラーラ監督との出会いは、ギリシャだったそうだ。「今から3年前にギリシャの映画祭にアベルの映画作品が出品され、彼はその映画のパーティーに世界中のフィルムメイカーや映画関係者を呼んでいた。その中に僕もいたんだよ。すると、会場でFワードばかりで会話をしている人がいて、この男はおそらくニューヨーク出身だと思い、近づいてみたら、それがアベルだった。彼と話してみると、僕がアシスタントを始めた15、16歳の頃から、アベルはすでにスクリーンで上映するような映画を作っていたことがわかった。彼の作品はマーティン・スコセッシ監督の初期の作品を彷彿させるものもあって、とてもユニークな監督だと思ったよ。そんな独特な手法で描く彼を気に入ったことが、彼と共に仕事をするきっかけになったんだ」と語るニックは、最初から監督と波長が合ったそうだ。

 ニックと監督は、1970年代から現在までのさまざまな映画について語り合い、その会話に出てきた映画をドキュメンタリーに含めることを検討したそうだが、映画の使用料が高額だったため、使用を断念したそうだ。「多くのスタジオの連中は、興行や数字ばかりを気にしているが、中にはトライベッカ映画祭のように、人や映画製作を信じて投資したり、サポートしたりする機関や団体がある。そういうニューヨークが今の僕を形成しているし、だからこそ独立系映画館が生き残れるようにしなければいけないと思っている。できる限り観客を呼ぶために、以前にはチケット代だけで、ポップコーンとドリンクを無料で提供していた時期もあったよ」とニックは明かした。

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 ニックが経営するブルックリン区ベイリッジにある映画館アルパイン・シネマズは、ニューヨークで最も古い映画館の一つだが、ここ2年で周りにあった5つの映画館が閉館したそうだ。「僕は、開発者や投資家などによる映画館買収の依頼をずっと断っているんだ。役所の人間は桁外れの税金を要求してくるが、営業を続けるためには、それを払わなければいけないのが現状なんだ」と語り、ニックは私財をなげうって、経営を維持していることも明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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