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慰安婦問題に切り込んだ日系アメリカ人監督、複雑なテーマに挑んだ理由

ミキ・デザキ監督
ミキ・デザキ監督

 慰安婦問題をテーマとするドキュメンタリー映画『主戦場』が20日に公開となり、都内で行われた初日舞台あいさつに、本作を監督した日系アメリカ人の映像作家ミキ・デザキが登壇。日韓関係に大きな影を落とす複雑な問題に挑んだ理由と、本作が目指すところについて、熱っぽく語った。

『主戦場』予告編

 YouTuberとしても活動し、山梨県と沖縄県の中高等学校で5年間教鞭をとったこともあるというデザキ監督。「日本にも人種差別はある」という内容の動画をYouTubeにアップしたところ、ネット右翼から脅迫を受け、同じようにバッシングを受けた元朝日新聞記者でジャーナリストの植村隆が扱った慰安婦問題の論争に興味をひかれたという。

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 そうした自身の経験から、デザキ監督は「日韓が議論しようとして感情的にぶつかるのは、互いの歴史的背景や文脈を知らないから、持っていないからではないかと思いました」と話す。「ならば、文脈を明らかにすることで、今後の差別や怒りを防ぐこともできるのではないか」と本作の制作に向かった。

 本作でデザキ監督がとったのは、いわば「両論併記」という形式。「慰安婦たちは性奴隷だったのか」「強制連行はあったのか」「元慰安婦たちの証言はなぜブレるのか」「日本政府の謝罪と法的責任は?」などの論点について、否定派/肯定派、右派/左派、日米韓の論争の中心人物たちにインタビューし、それぞれの発言を検証する。登場するのは、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、ケント・ギルバート(弁護士・タレント)、杉田水脈(政治家)、吉見義明(歴史学者)ら。

 「両論併記」という方法については「慰安婦の否定論者や歴史修正主義に、発言の場を与えることになる」という批判もあったという。だがデザキ監督は「慰安婦を扱う映画を、右側の人は観ようと思わないでしょう。私は、右派も左派も、両方の人に本作を観てほしかった。それに日本では、否定派の歴史観(右派)の方がむしろ主流になりつつあるとも思っているんです」と指摘する。「ある試写会で1人の学生から『(本作で)左派の意見を初めて聞くことができた』と言われました」と付け加える。

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 「テレビのニュースを観て、隣国に憎しみや怒りを覚えるのでなく、相互理解を目指して、タブー化のない建設的な議論ができる環境が作れたらいい」と本作に込めた思いを語ったデザキ監督。さらに自身が日系アメリカ人であることを踏まえ、「アメリカが日本に再軍備を迫っていることは、自分にも関係があると思っています。将来、アメリカが始めた戦争で、日本の若い人が死ぬようなことにならないよう、その前に何かしなければと、責任も感じます」と最後に明かしていた。(取材・文/岸田智)

映画『主戦場』はシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中

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